Please Please MeAbbey Road

Come Together
Something
Maxwell's Silver Hammer
Oh! Darling
Octpus's Garden
I Want You
Here Comes The Sun
Because
You Never Give Me Your Money
Sun King
Mean Mister Musterd
Polythene Pam
She came In Therough The Bathroom Window
Golden Slumbers
Carry That Weight
The End
Her Majesty

 ビートルズ総集編だ。「演出家」は最後を壮大に仕上げようとし、「ブルーズマン」は吠える。「第三の男」は隠された才能を見せつけ、「ドラマー」までもが曲を作る。ビートルズを完璧に締めくくり、そしてそれ以降の予告編までちらりと見せる。これ以上のラストシーンがあるっていうのか?

 「ブルーズマン」は前作(ここでは"Get back"のこと)から引き続く「原点回帰」の作業をよりクリエイティヴに発展させようとしているようだ。
 例えばホワイト・アルバム的不気味さを持ったオープニング"Come Together"はチャック・ベリーからの引用(盗作として訴えられたが、何処が似てるっていうんだ?)を交えつつR&Rの解体と再構築をやろうとしているようにも聞こえる。曲そのものはレノンブルーズの発展型で、その黒さはジョンの内面の「ブルーズマン」だけでなく、彼の暗黒面も表しているようにも聞こえる。リンゴのドラム(曲のメインリフ)は闇に引きずり込まれるようだし、オープニングの「Shoo!」が実は「Shoot Me!」だった亊を知ったときの恐怖といったら...
 この曲が優れたブルーズだということはこれを取り上げた数多くのミュージシャンの中にかなりの割合で黒人(または黒人を強くリスペクトする)アーティストが含まれているという事実で充分だろう。

 "I Want You"は当時のブルーズロックの波を意識したと思われるヘヴィーな曲で、いつもの無意識変拍子を交えつつダイナミックに展開していく。リンゴは時に重く、また時にはラテン風(フリートウッド・マックの"Black Magic Woman"に影響されたと言われる)に軽快なドラミングを聴かせ、曲を引っ張る。また、ポールのずぶといベースがキモで、この気合いの入り方は彼がいかに歌詞なんて気にしてないかが良く解る。オルガンは例によってビリー・プレストンだが、これもソウルフルな味を出すのに貢献している。シンセでホワイトノイズを出してるのはジョージ。

 "Because"はベートーベンを元ネタにしただけあって曲そのものには黒っぽさはさすがに感じないが、教会音楽を彷彿とさせるコーラスにごくごく微妙なゴスペル風味を感じるのはさすがに考え過ぎだろうか。こういう曲でも血と肉は隠しようが無い、ってことなんだけど。

 メドレーに関してはまとめて検証する。次は「演出家」が演出しなかった部分だ。彼も自身のルーツに立ち返っている。
 ようするにまたしてもファッツ・ドミノがやりたかったんだろう。"Oh! Darlin'"は徹底的なオールディーズスタイルのピアノバラードで、曲の構成は50年代のニューオリンズから借りているものが多い。ピアノはドミノ風、ヴォーカルはリトル・リチャードスタイル。ポールの原点が全てここにあると言ってもいいような曲で、ジョンはこれを歌いたがったが彼ではこの雰囲気は出なかっただろう。こだわりまくったポールの渾身のヴォーカルは8年間で最高と言ってもいいほどだ。

 "Maxwell's Silver Hummer"は得意の「お伽話系」のサウンド。やはり彼の別のルーツであるミュージックホールの音を69年風に再構築したものだ。その際に活躍したのが新兵器のムーグ・シンセサイザー。ここではポール自身が演奏している。しかしこの異常な歌詞をコミカルな曲に載せる彼もどうかしてる。

 ジョージの傑作"Something"はまさしく(好みを別にしても)ビートルズ時代の彼の集大成、最高作と行っていい。そして、来たるべきソロアルバム"All Things Must Pass"への素晴らしい予告編とも言える。スモーキー・ロビンソンを敬愛するジョージらしいソウルバラードとも言える曲で、ギターも冴え渡っている。ソロの素晴らしさはいうまでもないし、イントロなどのメインフレーズのシンプルな美しさと言ったらないだろう。
 他のメンバー(ジョンはほとんど不参加だが)も冴えている。ポールのベースも彼のベストプレイの一つで、特に後半のヴォーカルの合間に入るカウンターメロディはこれ無しに曲が成り立たないほど最高。リンゴもイントロなどで抑えたドラミング(ハイハットをほとんど使わないのが特徴)で曲を引き立てている。ここでハイハットを使わないことで中間部のドラミング(ハットはオーバーダブ)が立ってくるわけで、この構成力には脱帽。

 B面トップの"Here Comes The Sun"はさわやかなフォーク風の曲。イントロの終わりなどに出てくるポルタメントをかけたシンセが印象的。このサウンドが後にジョージのスライドギターのアイディアに繋がったと言われていて、そう意味でも重要。アメリカでのCSN&Yなどの登場を敏感に察知した結果生まれたのかもしれない、この時期ビートルズ内最先端男のジョージならではの名曲だ。

 リンゴがビートルズに提供した2曲目、"Octpus's Garden"は、"Yellow Submarine"のリンゴ自作版、または続編といった感じ。やはりポールとの大きな違いはカントリー風味がどうしても入るあたりで、そこがリンゴの個性だろう。自作に気合いも入るのか、ドラミングも冴えている。ジョージの伸びのいいギターにも注目かな。

 さて、最後にメドレーをまとめていこう。「メドレー」としての評価になるとポールとマーティンの構成力の勝利、と言うことになるんだろうけど、それで片づけられないほど重要な部分もある。ここではあえて1曲ずつに目を向けてみる。

 "You Never Give Me Your Money"は早くも始まったポールの「憧れのウォームガン症候群」が出ていて、曲の構成は"Happiness Is A Wrm Gun"の影響を強く受けている。この病気はソロになってからも出続けている。
 それを抜きにしてもドラマティックな名曲。これ1曲が既にメドレー的な造りで、全体の予告編としての役割も果たしている。バラード的に始まるメロディーは後にソロの"Everynight"でも流用されるポールお気に入りのライン。そしてホンキートンク調ピアノをフィーチャーしたブギ・ウギ調の中間部に突入するとポールのヴォーカルもファンキーさを強調したずぶといものになる。ここでのリンゴの跳ねたドラミングが気持ちいい。エンディングのギターソロはポールか?

 続く"Sun King"はジョン作で、これもフリートウッド・マックの"Albatros"の影響を受けたものといわれていて、この時期ジョンは嫌いと言いつつだいぶマックを意識していたようだ。元ネタ共々トロピカルな雰囲気だが、何故かいんちきスペイン語が載ってきてワケ解らない異国情緒が漂う。

 間髪入れずに始まる"Mean Mr. Musterd"は、ホワイトアルバムの時期に完成していたブルーズナンバー。ジョン自身の弾くエレピが妙にファンキー。リンゴとのリズムもばっちりだ。デモやリハーサルではサビに当たる部分があったが、明らかに弱く、完成ヴァージョンでカットしたのは正解。

 次の"Polythene Pam"は前曲の続編で、これもホワイト期に書かれていた。こちらもブルース系の曲だが、タムを多用したリンゴのアフリカンビートに近いような独特のドラミングが聞き物。アコギのキレのよさもジョンならでは。つなぎのギターソロはジョージ?

 ソウルフルな"She Came In Through The Bathroom Window"はこういう形で収まるのが勿体ないほどの曲。ジョー・コッカーがカヴァーするのも当然、と言う感じだ。コンパクトな中に後期ビートルズの黒い要素がぎっしり詰まっている。ポールのヴォーカルはあえて抑えめにクールに語るのが歌詞の不思議な唐突さを強調する。メドレーはここで第1部が終了。

 第2部は"Golden Slambers"から始まる。マザーグースの子守歌をポールが勝手にゴスペルにしてしまった感じ。ピアノとヴォーカルで完成している。

 "Carry That Weight"はビートルズへのパワフルな別れ歌か。中間部では"You Never..."の最初のパートが寄りドラマティックにくり返され、組曲らしさを強調、更にエンディングにも同曲のラストのギターフレーズが再登場する。
 いくつかの書籍ではヴォーカルはポールが一人で多重録音したとあるが、誰が聴いてもリンゴが歌ってることは明らか。むしろリンゴがリード、と言ってもいいくらい目立っている。ジョンは不参加。

 いよいよラストの"The End"だ。ハードロックファンファーレで始まり、4人のソロが登場する(ポールのベースソロも聴きたかった?)もう言い尽くされてはいるが、やはりジョンのソロは白眉。あんな乱暴なギターソロなかなか聴けないでしょ。リンゴもシンプルながらいい感じの(ファンにしか解らんかもしれないが)ドラムソロを聴かせている。
 そして最後はしっとりと、且つドラマティックにエンディングを迎える。ちょっときれいに演出しすぎの感もあるが...

 ビートルズはそう一筋縄には行かんのだ。しっかり"Her Majesty"でオチを付けてチョン。