Abbey Road
Come Together |
ビートルズ総集編だ。「演出家」は最後を壮大に仕上げようとし、「ブルーズマン」は吠える。「第三の男」は隠された才能を見せつけ、「ドラマー」までもが曲を作る。ビートルズを完璧に締めくくり、そしてそれ以降の予告編までちらりと見せる。これ以上のラストシーンがあるっていうのか? 「ブルーズマン」は前作(ここでは"Get back"のこと)から引き続く「原点回帰」の作業をよりクリエイティヴに発展させようとしているようだ。 "I Want You"は当時のブルーズロックの波を意識したと思われるヘヴィーな曲で、いつもの無意識変拍子を交えつつダイナミックに展開していく。リンゴは時に重く、また時にはラテン風(フリートウッド・マックの"Black Magic Woman"に影響されたと言われる)に軽快なドラミングを聴かせ、曲を引っ張る。また、ポールのずぶといベースがキモで、この気合いの入り方は彼がいかに歌詞なんて気にしてないかが良く解る。オルガンは例によってビリー・プレストンだが、これもソウルフルな味を出すのに貢献している。シンセでホワイトノイズを出してるのはジョージ。 "Because"はベートーベンを元ネタにしただけあって曲そのものには黒っぽさはさすがに感じないが、教会音楽を彷彿とさせるコーラスにごくごく微妙なゴスペル風味を感じるのはさすがに考え過ぎだろうか。こういう曲でも血と肉は隠しようが無い、ってことなんだけど。 メドレーに関してはまとめて検証する。次は「演出家」が演出しなかった部分だ。彼も自身のルーツに立ち返っている。 "Maxwell's Silver Hummer"は得意の「お伽話系」のサウンド。やはり彼の別のルーツであるミュージックホールの音を69年風に再構築したものだ。その際に活躍したのが新兵器のムーグ・シンセサイザー。ここではポール自身が演奏している。しかしこの異常な歌詞をコミカルな曲に載せる彼もどうかしてる。 ジョージの傑作"Something"はまさしく(好みを別にしても)ビートルズ時代の彼の集大成、最高作と行っていい。そして、来たるべきソロアルバム"All Things Must Pass"への素晴らしい予告編とも言える。スモーキー・ロビンソンを敬愛するジョージらしいソウルバラードとも言える曲で、ギターも冴え渡っている。ソロの素晴らしさはいうまでもないし、イントロなどのメインフレーズのシンプルな美しさと言ったらないだろう。 B面トップの"Here Comes The Sun"はさわやかなフォーク風の曲。イントロの終わりなどに出てくるポルタメントをかけたシンセが印象的。このサウンドが後にジョージのスライドギターのアイディアに繋がったと言われていて、そう意味でも重要。アメリカでのCSN&Yなどの登場を敏感に察知した結果生まれたのかもしれない、この時期ビートルズ内最先端男のジョージならではの名曲だ。 リンゴがビートルズに提供した2曲目、"Octpus's Garden"は、"Yellow Submarine"のリンゴ自作版、または続編といった感じ。やはりポールとの大きな違いはカントリー風味がどうしても入るあたりで、そこがリンゴの個性だろう。自作に気合いも入るのか、ドラミングも冴えている。ジョージの伸びのいいギターにも注目かな。 さて、最後にメドレーをまとめていこう。「メドレー」としての評価になるとポールとマーティンの構成力の勝利、と言うことになるんだろうけど、それで片づけられないほど重要な部分もある。ここではあえて1曲ずつに目を向けてみる。 "You Never Give Me Your Money"は早くも始まったポールの「憧れのウォームガン症候群」が出ていて、曲の構成は"Happiness Is A Wrm Gun"の影響を強く受けている。この病気はソロになってからも出続けている。 続く"Sun King"はジョン作で、これもフリートウッド・マックの"Albatros"の影響を受けたものといわれていて、この時期ジョンは嫌いと言いつつだいぶマックを意識していたようだ。元ネタ共々トロピカルな雰囲気だが、何故かいんちきスペイン語が載ってきてワケ解らない異国情緒が漂う。 間髪入れずに始まる"Mean Mr. Musterd"は、ホワイトアルバムの時期に完成していたブルーズナンバー。ジョン自身の弾くエレピが妙にファンキー。リンゴとのリズムもばっちりだ。デモやリハーサルではサビに当たる部分があったが、明らかに弱く、完成ヴァージョンでカットしたのは正解。 次の"Polythene Pam"は前曲の続編で、これもホワイト期に書かれていた。こちらもブルース系の曲だが、タムを多用したリンゴのアフリカンビートに近いような独特のドラミングが聞き物。アコギのキレのよさもジョンならでは。つなぎのギターソロはジョージ? ソウルフルな"She Came In Through The Bathroom Window"はこういう形で収まるのが勿体ないほどの曲。ジョー・コッカーがカヴァーするのも当然、と言う感じだ。コンパクトな中に後期ビートルズの黒い要素がぎっしり詰まっている。ポールのヴォーカルはあえて抑えめにクールに語るのが歌詞の不思議な唐突さを強調する。メドレーはここで第1部が終了。 第2部は"Golden Slambers"から始まる。マザーグースの子守歌をポールが勝手にゴスペルにしてしまった感じ。ピアノとヴォーカルで完成している。 "Carry That Weight"はビートルズへのパワフルな別れ歌か。中間部では"You Never..."の最初のパートが寄りドラマティックにくり返され、組曲らしさを強調、更にエンディングにも同曲のラストのギターフレーズが再登場する。 いよいよラストの"The End"だ。ハードロックファンファーレで始まり、4人のソロが登場する(ポールのベースソロも聴きたかった?)もう言い尽くされてはいるが、やはりジョンのソロは白眉。あんな乱暴なギターソロなかなか聴けないでしょ。リンゴもシンプルながらいい感じの(ファンにしか解らんかもしれないが)ドラムソロを聴かせている。 ビートルズはそう一筋縄には行かんのだ。しっかり"Her Majesty"でオチを付けてチョン。 |