McCartney

Paul McCartney

Paul McCartney / Vocals , All Instruments
Linda McCartney / Backing Vocals

SIDE 1

the Lovely Linda
That Would be Something
Valentine Day
Every Night
Hot As Sun / Glasses
Junk

SIDE 2

Man We Was Lonely
Oo You
Mommo Miss America
Teddy Boy
Singalong Junk
Maybe I'm Amazed
Kreen-Akrore

 いきなり"The Lovely Linda"という「ウチの奥さん可愛いんだよ〜」ってしょーもない宣言で始まるあたりがこのアルバムのプライベート性を物語る。曲自体もアコースティックで可愛い感じに作ってあって、完全に確信犯。単なるのろけである。まあ、新婚さんだしなあ。

 "That Would Be Something"はベースとギターと最小限のドラム(ほとんどパーカッションとして使われている)で演奏されるロカビリー風の曲。ちょっとエルヴィス入ったヴォーカルと、得意の口パーカッションが楽しい。極めてラフなのでちょっと聴きデモレコーディングみたいだが。

 "Valentine Day"はこのアルバムの多くを占めるインスト曲の一つ。ブルージーなギターをフィーチャーしたヘヴィな曲。こういうのはもうちょっと発展させてバンドでやってほしかった。上手く行けば"Wild Life"あたりに入れても良さそうな曲かもしれない。もちろんちゃんと歌詞を書いてね。

 "Every Night"は個人的にも大好きなポップな曲。バラードって呼ぶのは違う気もするな。"Mother Nature's Son"あたりと同系統のアコースティックポップ。言わずと知れたポールの得意分野だ。ビートルズ時代に出来ていた曲の一つで、ゲット・バック・セッションでもプレイされている。多分ビートルズでやっても素晴らしかっただろう。いい曲はどうやったっていい。ウイングスやソロでも度々プレイされているが、それにしたって悪かったためしがない。

 ビートルズ時代以前に作られていたインスト"Hot As Sun"は何となくトロピカルな仕上がり。このアルバム(他のメンバーのソロデビュー作にも多いが)に数曲収められているゲット・バック・セッションの残り物の一つ。クロスフェイドで"Glasses"という曲につながっているが、これはワイングラスのふちをこする例のアレ。特に独創性のある演奏ではない。そして最後に一瞬"Suicide"の断片が聴ける。フルヴァージョンは未だ発表されていないピアノによる小曲。

 アルバム中で一番美しいメロディなのが"Junk"だ。ほとんどアコギ一本で成立しているが、控えめなベースとドラムがシンプルさを妨げること無くサポート(と言っても一人で演奏しているのだが)。"Why, Why...”の所の高音のハーモニーが好きだ。これもビートルズ時代の曲で、ホワイト・アルバムのデモにも収録(ビートルズ・アンソロジー3で聴ける)。

 "Man We Was Lonely"にはリンダがコーラスで参加。こういうカントリー風の曲にはリンダはよく似合う。国民性だろう。なんとなく「お前可愛いかみさんいて寂しくなんか無いじゃないか」と言いたくなるのは俺のひがみである。アコギに極端なエコーがかかっているのが面白い効果。

 "Oo You"は元々インストだったと言うが、確かに"Valentine Day"に通じる雰囲気を持っている。これもブルージーで重い曲だ。従って後からつけられたメロディもさほどメロディアスじゃなく、いわゆるブルーズ的なステロタイプな物になっている。これはメロディ男ポールにはワリと珍しい。

 "Momma Miss America"のタイトルは当然リンダのことだが、曲もリンダの"Oriental Nightfish"を彷彿とさせる部分があって、何か繋がりがあるのかも、とか勘ぐりたくなる。基本的にはアドリブ演奏らしいが、結構まとまった曲に聞こえる。後半部は"Valentine Day"と同系統のギターインスト。

 もう一曲の「残り物」が"Teddy Boy"だ。アルバム"Get Back"収録直前までいったが、結局外されたこの曲をポールはファーストソロにまわした。エレキギターの使用が中途半端だったビートルズ版に対し、ソロヴァージョンはあくまでアコースティックにまとめている。ちょっと"Two Of Us"っぽいが、ビートルズのも"Two Of Us"と同じセッションでの録音の筈なんだけどな。どっちの出来がいいかは言うまでもないだろう。リンダのハーモニーが妙に可愛らしい。

 "Singalong Junk"訳すと「カラオケ・ジャンク」だが録音は別だ。ちょっとラウンジっぽい雰囲気があって、後のスリリントンに繋がる発想と考えると面白いかも。

 "Maybe I'm Amazed"はポールのピアノバラードの代表の一つ。バラードとは言っても甘さは皆無。むしろへヴィーで、パワフル。ブルージーでロックしている。当然ライヴ映えする曲で、ウイングスの全てのツアー及びソロでの多くのツアーでも採り上げ、常に一つのハイライトの座を担っている。特に"Over America"のヴァージョンはこのオリジナル版がデモに聞こえる出来で、シングルにもなった。このテイクもいいが、やはりこの曲はウイングスの演奏に限る。

 ラストの"Kreen-Akrore"はパーカッションとサウンド・エフェクトを多用した実験的なインスト。音程のある楽器(ギター等)は一瞬出てくるだけで、全体に異様な雰囲気が漂っている。