Off The Ground

Paul McCartney

Paul McCartney / Lead Vocals , Guitars, Piano, Bass, Drums, Keyboards & Percussions
Hamish Stewart / Second Vocals, Guitars, Bass, Piano & Percussions
Linda McCartney / Vocals, Auto Harp, Keyboards & Percussions
Robbie McIntosh / Guitars, Mandolin & Vocals
Paul "Wix" Wickens / Keyboards, Programming, Percussions & Vocals
Blair Cunnigham / Drums, Percussions & Vocals

Off The Ground
Looking For Changes
Hope Of Delivelance
Mistress And Maid
I Owe It All To You
Biker Like An Icon
Peace In The Neighbourhood

Golden Earth Girl
The Lovers That Never Were
Get Out Of My Way
Winedark Open Sea
C'mon People

Cosmically Concious

 "Flowers In The Dirt"とそれに伴うツアーを成功させたポールとそのバンドは、新しい仲間達とそのままの気分でスタジオに入った。ポール自身このアルバムを「バンドのアルバム」と語っており、実際にほとんどの曲を通称「ランピー・トラウザーズ」の6人で録音している(ドラマーのみクリス・ウィッテンからブレア・カニンガム-元プリテンダーズ、ヘアカット100等-に交代)。サウンドは直前に出た"Unplugged"(ドラムはブレア)の影響を引きずってアコースティック色の強いものになっている。
 問題は歌詞だ。前のツアーで「チキュウヲマモロウ!」などとわめいていたポールがよりによって環境問題に手を出しているのだ。しかしこの人、こういうコトがどうしようもなく向いていないのだな。曲が詞に引きずられ、本来の魅力を薄めてしまったパターンが散見される。「馬鹿げたラブソング」はどうしたんだよ?と言いたくなってしまうのだ。

 とはいえ、これから例の如く各楽曲の紹介に入るのだが、("Press To Play"同様に)いちいち挙げようとすると意外に好きな曲の多さに気付くのがこの人の困ったところだ。そして、オープニングの"Off The Ground"がもういきなり最高にイカしたポップソングなのだ。歌詞も馬鹿馬鹿しいくらい能天気に愛を歌っているし、メロディが物凄くポップだ。そしてウィックスのプログラミングによるドラムとブレアの生ドラムの見事なコンビネーション。気持ち良く歌うロビーのスライド、ウイングスの様にはまったリンダのハーモニー。良い時のポールの要素が全部つまっている。

 逆に「やっちゃった」感じが強いのが"Looking For Changes"だ。動物愛護をテーマにしたR&Rだが、パワフルに持っていこうとしているのが逆に空回りしている感じ。メロディこそ悪くないが、とりあえずバンドでラフに録って、言いたい事も言って満足、って感じで物足りない。俺はどうしても好きになれない。

 最初のシングルになっていた"Hope Of Deliverance"は前述したアコースティック感覚を強く感じさせる曲。ブレアと、ゲストの打楽器奏者達のリズムにのせて軽快に歌われるポップな曲だ。そしてそのパーッカシブなサウンドをポール、ヘイミッシュ(12弦)、ロビーの3人によるアコギで更に強調する。ヘイミッシュのリズムが良い。楽器が下手なリンダが下手でも弾けるオートハープでいい味を出しているのにも注目。

 エルヴィス・コステロとの共作も2曲入っていて、何故か両方ともワルツだ。最初のものが"Misteress And Maid"で、サウンドも込みでコステロ色が強い曲だ。アルバム全体の雰囲気がゆるいので、この曲は最高のスパイスとして機能している。サビのバッキングなんかは近年のコステロ&インポスターズの作品に入っていても違和感が無い気もする。特にベースの独特のフレーズが印象的だ。

 "I Owe It All To You"はアコギの弾き語りからヘヴィーに展開するバラード。なんとなくサウンド的に"Flaming Pie"に入っていそうな感じの曲だ。また、特に後半のラフな雰囲気はなんとなく"Wild Life"のアルバムも彷彿とさせる。ロビーのギターが全体の雰囲気を引き締めている。

 "Biker Like An Icon"は対して意味のない、ごろ合わせ主体の詞("Jet"などと同タイプ)を疾走感のあるサウンドに乗せた、違った意味でポールらしい曲。あくまでハードなR&Rなのだが、サウンドはアコースティック楽器が主体なのが面白いところだ。ここでもロビーのスライドが全員をリードする。ベースはヘイミッシュか?

 "Peace In The Neighbourhood"はどこかトロピカルなイントロで始まるポップな曲。ただ、曲もアレンジもどこか焦点が定まっていない感じでもうひとつぱっとしない。ヴォーカルも意味なく力んでるように聞こえるし。こういう「何が悪いか解らないけど物足りない曲」が多い時のポールはキツい。

 そう言う感じが「いつものアコースティックな小曲」に現れてるのは更に厳しい。"Golden Earth Girl"を最初に聴いた時は「"Mother Nature's Son"と"Warm And Beautiful"を足して3で割ったような曲」いい曲同士を足したんだけど3で(4か5かもしれない)割ってしまったのでどこか物足りないのだ。普通だったら、ポールファンだったら絶対好きになる曲。でも俺は好きじゃない。あまりにも薄い。

 "The Lovers That Never Were"もコステロと作った曲。イントロが凄くコステロっぽい(彼が弾いてるようにも聞える)のだが、メロディはどっちかと言うとポール寄り。アレンジ面ではドラムのアクセントが面白い位置にあるのが耳につく。終盤のバッキングヴォーカルはポールとヘイミッシュのようだが、コステロの声で聴きたかった気もする。

 "Get Out Of My Way"は典型的なチャック・ベリースタイルのR&R。つまり"I Saw Her Standing There"をリメイクしたような感じで、ブリッジに使われたホーンがアクセント。だが、面白く無い。典型的すぎてすぐに飽きてしまうのだ。

 "Winedark Open Sea"はエレピを主体にしたゆったりとしたバラード。"However Absurd"から余計な装飾を省いた感じにも聞こえる。この曲の場合はその薄さが成功していて、気持ち良く聴ける。中盤で(おそらくロビーの弾く)ギターがストーンズ風に聞こえる瞬間も・・・。サビのメロディが"Lazy Dynamite"風なのは気付かなかった(笑)

 ラストの"C'mon People"は「ポール流大団円系バラード」の集大成とさえ感じる曲だ。ピアノの弾き語りで始まり、徐々に盛り上がり最終的には盛大なサウンドに持っていく得意のパターンで、「元ビートルズの」ポールじゃなかったら(つまり"Hey Jude"が無かったら)多分平気でライヴでもラストで使っただろう。そう言う場所が良く似合う曲で、アルバムでもこの位置しかありえない。駆け上がるフレーズが印象的なベースはヘイミッシュ。そしてオーケストラはジョージ・マーティンが指揮(!)。エレクトリックとアコースティック両方でリードを弾くロビーも最高のプレイだし、エンディングへ向かうブレアのドラムロールがまた素晴らしい。それに口笛風の音色(メロトロンのフルート?)で奏でられるフレーズがまたやたらに気持ち良い。色々問題あっても最初と最後はがっちり締めてくれるから決して「嫌いなアルバム」にはならないんだよな。

 最後に嬉しい「蛇足」も。68年にポールがインドで作った"Cosmicaly Concious"のさわりが入っているのだ。これもいい曲だし、"C'mon People"のあとでさらりと聴かせるやり方も結構気が利いている。フルヴァージョンはシングルで聴けるので安心。