Pipes Of Peace

Paul McCartney

Paul McCartney / Vocals , Bass, Guitars & Keybords
Linda McCartney / Keybords & Backing Vocals
Eric Stewart / Guitars & Vocals
Denny Lane / Guitars
Dave Mattacks / Drums
Ringo Starr / Drums
Andy McKay / Sax
Seteve Gadd / Drums
Stanley Clarke / Bass
Michael Jackson / Vocals
James Kippen / Tabla
Chris Smith / Harmonica
George Martin / Keyboards, Bycicle

and more

SIDE 1

Pipes Of Peace
Say Say Say
The Other Me
Keep Under Cover
So Bad

SIDE 2

The Man
Sweetest Little Show
Average Person
Hey Hey
Tug Of Peace
Through Our Love

 話題性は大きいのに、何故か存在感が妙に地味なアルバムである。どうもアルバム自体がシングルに食われてしまった感が強い。しかし、それだけに聴いていると実に味わいのあるいいアルバムで、隠れ(?)ファンも多いと思われる。話題になったマイケル・ジャクソンとのデュエットも決してアルバムから浮いているわけではない。
 数曲は前作"Tug Of War"の時期に録音されており、作品のテーマも含め、続編的な色が強いアルバムである。したがって、デニーやリンゴ、スタンリー・クラーク、スティーヴ・ガッドが参加したトラックは前作のレコーディング時のアウトテイクである。

 "Pipes Of Peace"は戦場のSEを配し、平和を訴えたバラードだ。マッカートニー節炸裂のポップにポップを重ねたメロディは完璧の一言だが、実はアレンジが非常に凝っている。「平和のパイプ」ことバグパイプが印象的だが、少年少女による合唱や軍隊風のドラム、更には後半に突如現れるタブラ(!)等、様々な楽器が、非常に効果的に使われている。それに本業のベースラインがまた実に良いのだ。テンポチェンジするあたりのピックアップフレーズとか、凄くいい。

 マイケル・ジャクソンとのデュエットでやたらに有名な"Say Say Say"、こいつがアルバムを食ってしまったわけだが、だからって言って毛嫌いする理由は全くない。以下にも時代なディスコビートのこれまた完璧ポップ。マイケルもここでのポールとの仕事で得たものは大きかったんじゃないだろうか。
 これまたアレンジが面白く、ダンスナンバーとして聴いていると聞き逃しそうな楽器が結構出てくる。なんせ、後半のソロパートがハーモニカである。しかもその直後にはバンジョーが!しかしカントリー臭さは一切無いのが面白い。この辺がポールらしさか。
 それにしてもポールはデュエットすると相手の歌い方に合わせてしまうクセがある様だ。

 ほとんどソロで録音された"The Other Me"はちょっと地味な存在感の曲で、シングルヒットが続いたあとに箸休めするには最高の曲だ。別にショボいワケではない。こういうポールが一番好きって人は多いだろう。特筆することは何にも無い曲だが、聴いててホッとする、気持ちのいい曲だ。

 "Keep Under Cover"は前作と同時に録音された曲のひとつで、デニーが参加している。スローにスタートして一転、シャープなストリングスをフィーチャーしたロックナンバーになる。ギターソロ直後のブレイクでの3音のピアノが凄く印象に残る。ギターサウンドにウイングスっぽい瞬間があるが、これはデニーが弾いてる、って言うよりも多分ウイングスのギターの多くをポールが弾いていた証拠だろう。

 ビデオクリップにリンゴ(と、エリック・スチュアート)が登場してファンを喜ばせた"So Bad"も前作と同時録音である。ポールがファルセットで歌う奇麗なバラード。歌にも勝るほどにメロディアスなベースラインがまた、美しい。ギターや鍵盤はあくまで上モノで、リンゴとポール二人でほとんど完成してしまっている感じだ。ビートルズのリズム隊は伊達じゃないのだ。

 もう1曲のマイケルとの共演、"The Man"はシングルカットも予定されていたポップナンバー。これもポールとマイケルがよく似た歌い方をしていて、一瞬どっちが歌ってるのか解らなくなる。2回目のサビ以降に登場するワンポイントの手拍子、ストリングス、突如ハードな(これまたウイングス風の)エレキギターなど、アレンジ的にも聴き所が多い。

 "Sweetest Little Show"はポール流アコースティックバラードって感じの曲。リズム隊はガッド/クラークで、ポールはギターを弾いている。硬質なベースサウンドはあきらかにポールとは違う物だ。彼らの演奏が独特のジャズっぽさを曲に付加していて、中間部に登場するアコギのソロもそれを引き継いでジャジーな味わい。あとで追加されたパートだというが、良く馴染んでいる。

 そのままメドレー的に突入する"Average Person"は"Tug Of War"のアウトテイクのシンプルなロックナンバー。これまたベースが良くうなっている。ヴァースの最後のフレーズは"Tug Of War"のエンディングにも登場するフレーズで、2枚のアルバムのリンクを感じさせる要素になっている。デニーがギターで参加。ドラムはデイヴ・マタックスか?

 "Hey Hey"はクラーク、ガッドとのセッションで出来たフュージョン風インストで、作曲もポールとクラークの共作扱いになっている。まあ、いかにもジャムセッションという感じの曲で、あんまりポールファンにはアピールしない曲かもしれない。B面の存在感を地味にしている原因のひとつじゃないかなあ。

 "Tug Of Peace"はタイトル通り"Tug Of War"と"Pipes Of Peace"を合成した曲で、この曲の存在で「2枚併せてトータルアルバム」と言う感じを作ってしまった。圧巻はポールとジョージ・マーティンで「演奏」したという「サトウキビの束」である。イントロなどでザクザクと鳴ってるのがそれで、メインのドラム以上の強烈なビートを打ちだしている。

 "Through Our Love"は"Pipes Of Peace"に似たSEで始まるが、もう「普通の」マッカートニー流バラード。まあ、いい曲ではあるんだが個人的には普通度が高すぎてあまり好きになれない。中盤以降やたらに壮大になるあたりもちょっと・・・

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