|
Paul McCartney Paul McCartney / Vocals , Bass,
Guitars, Drums & Keybords |
|
|
SIDE 1 Tug Of War |
SIDE 2 Ballroom Dancing |
|
前作は「ウイングスのポールのソロ活動」が結果的にウイングス解散後に出てしまった形になるものなので、このアルバムが実は解散後のファーストソロ、しかも宅録作品ではない最初の作品という位置づけになる("Ram"はリンダとのデュオ名義なので)。意外に小心者のポールはここはあえてがっちり固めるという方針にでた。失敗できないという意識も強かったんじゃないだろうか。勿論そこには「ジョンの死」も大きく影響しているだろう。「ビートルズを受け継ぐのは自分」という意識が、ここで芽生えたのだ(良くも悪くも)。 タイトル曲"Tug Of War"つまり「つなひき」だが、この曲は(アイリッシュ)フォーク風の曲調をベースに、リズムの抑揚でつなひきをやって見せている。途中でヘヴィーなビートとディストーションギターが突然フィーチャーされる部分をきっかけに軍隊風のホーンとドラムに引き継がれ、曲は一気にクライマックスへ。その後再び元の静かなパートへ戻るというコントラストの付け方が最高の効果を上げている。エンディングには次回作に収録される"Average Person"のフレーズが聴けるが、これは次作の一部とこのアルバムが平行して作られていた証拠の一つだろう。 リンゴとスティーヴ・ガッドの複雑なツインドラムに導かれて始まる"Take It Away"はアルバム中でも特にキャッチーな曲と言えるだろう。このドラムパートは左右のスピーカーから分かれて聞こえるが、別のフレーズを叩いたり合流したりと、実に多彩な表情を見せつつあくまでポップソングのバッキングとしての効果に注意を払って組み立てられたフレーズである、と言う所が凄い。ヘッドフォンで良く聴くと圧巻だ。メロディーも絶妙な緩急の付け方だが、エンディング附近のホーンのフレーズが個人的には大好き。 "Somebody Who Cares"のリズムセクションはフュージョン畑のスタンリー・クラークとガッドによるものだが、パン・パイプやポール自身によるスパニッシュギター、そして哀愁の漂うメロディのおかげで都会的な雰囲気と伝統的ヨーロッパの風景が同居するような曲になっている。ギターとギターシンセはデニー・レインによるものだが、彼にも似合う世界観を持つ曲だと思う。ウイングスで聴いてみたかった曲だ。 "What's That You're Doing?"はポールとスティーヴィー・ワンダーのジャムセッションから生まれたファンクナンバーで、スティーヴィーのシンセを軸に進行する。おそらく彼主導の曲だろう。シンベのフレーズなど、同時期のファンカデリックにも通じるものがある。アンディ・マッケイ(ロキシー・ミュージック)がウインドシンセを吹いているが、エリック・スチュワート等によるコーラス同様のオーヴァーダブだろう。 "Here Today"はまあ、説明もいらない気もするが、ジョンを追悼した曲で、意識的に"Yesterday"と同じ楽器編成で演奏されている(ただし、コーラスが入るのが唯一の違い)。ポールのバラードらしく淡々と歌われるのが逆に深い悲しみを感じさせる。 B面はオールドスタイルのR&R、"Ballroom Dancing"で始まる。ポップで溌剌とした曲で、ライヴ映えするはずだが演奏されたことはない。デニーがギターを弾く以外はほとんどの楽器(ホーンを除く)をポールが一人でプレイしており、そのせいか曲調のワリには躍動感が足りないのが残念。85年にはリンゴやジョン・ポール・ジョーンズ、デイヴ・エドマンズ等を迎えて再録されるが、そっちの方がライヴ感覚もあってかっこいい。 "The Pound Is Sinking"もスタンリー・クラークがベースを弾くフュージョンライクなサウンドを持つ曲だ。デニーのアコースティックギターが曲にいい味を与えている。不安定な経済状況を歌詞にするのはポールには珍しい題材だが、ころころ変わるリズムアレンジがその辺を表現しているのが面白い。ところでクレジットが無いドラマーは誰なんだろう。 "Wanderlust"は船の名前("London Town"のレコーディングの時にポール達が乗っていた船)を題材にした曲で、最高のメロディのピアノバラードだ。特に後半、ポールが二つのメロディを同時に歌うところが白眉。これは是非89年以降のバンドメンバーの演奏で聴きたかった(ヘイミッシュ・スチュアートとのデュエットで)。ちょっとドラムが硬質な印象なのが残念だが、これも"Give My Regards To Broad Street"でのヴァージョンで不満解消できる。 このアルバムの欠点として、大物ゲストに頼っているということが上げられると思うのだが、"Get It"はカール・パーキンスの参加という以外のトピックも無いオーソドックスなロカビリー風の曲。まさに「頼ってしまった」代表的な曲だ。悪い曲ではないが、傑作でもない。ただ、楽しげに歌ってるから「まあ、いいか」と言う気にはさせてくれる。 "Be What You See (Link)"はまあ、タイトル通りの「繋ぎ」で、ちょっと前作の"Summer's Day Song"を思い起こさせる雰囲気を持つ。こっちの方が圧倒的に短いが。 "Dress Me Up As A Robber"はクラークやガッドから影響を受けたのか、フュージョン風を自前でやっている曲である。ドラムこそ名手デイヴ・マタックスだがベースはポール、ギターはポールとデニー(デニーはシンセも)、そしてエレピをジョージ・マーティンが弾いている。「それっぽい」キメ(やはり微妙にドタバタ風ではある)がメインになっている曲で、ポールはファルセットを多用している。個人的にはかなり好きな曲の一つだ。前の「リンク」から間髪を入れずに始まる感じもいい。 ラストは当時大きな話題になり、大ヒットした"Ebony And Ivory"、言うまでもなくスティーヴィー・ワンダーとの共演だ。覚えやすいメロディに覚えやすい歌詞(あえて文法が無視されている部分も)、そして大物同士のデュエット。これが売れなければウソである。ソツの無い名曲だがポール一人で作ったせいかタイトルに反しやたらに「アイボリー」なのは御愛嬌。個人的には"What's That You're Doing?"の方が「エボニー」で好きだ。89年のツアーでは主にヘイミッシュ(結構「エボニー」なヴォーカルなのだ、これが)とのデュエットで歌われたが、スティーヴィーがゲスト参加した日もあった。 |
|