Driving Rain

Paul McCartney

Paul McCartney / Vocals , Bass, Guitars & Keybords
Rusty Anderson / Guitars & Backing Vocals
Abe Laboriel Jnr / Drums ,Percussions & Backing Vocals
Gabe Dixon / Keybords & Backing Vocals
David Kahne / Synth, Guitars, Programming & Produce

James McCartney / Guitars & Percussions
Ralph Morrison / Violin
David Campbell, Matt Funes, Joel Derouin, Larry Corbett / String Quartet

Lonely Road
From Lover To A Friend
She's Given Up Talking
Driving Rain
I Do
Tiny Bubble
Magic
Your Way
Spinning On Your Axis
About You
Heather
Back In The Sunshine Again
Your Loving Flame
Riding Into Jaipur
Rinse The Raindrops
Freedom

 2001年リリースのポールの新作は予想外に荒っぽい、ライヴ感覚にあふれたアルバムとなった。殆どの曲をアメリカ人の若いミュージシャンを集めた新バンドとのライヴ一発録音し、そこにオーバーダブしていく手法をとっていて、特にライヴ録りしたヴォーカルをそのまま使っている曲が多いのが特徴だ。これは、アンソロジー以降のビートルズ絡みの仕事でビートルズ時代のやり方をポールが思い出したことに起因している。
 サウンドそのものはライヴっぽい音を最新のテクノロジーで加工するというスタイルで、ファイアーマンなどのテクノ系の作品を通過したサウンド。賛否両論あるだろうが、上手いことポップの文脈に落とし込んでいる気はする。

 オープニングの"Lonely Road"は独特の歪みを持ったベースラインやポップながらどこか奇妙なメロディーと、"Ram"や"Red Rose Speedway"の頃のポールを聴いているような感じもある曲だ。前々作 "Flaming Pie"あたりから復活してきたポールらしいロック感覚にあふれた佳曲だ。

 "From Lover To A Friend"は典型的ポール型バラードではあるが、少しずらしたリズムパターンやサビ前のほとんど1音のメロディーなど、かなりひねりが効いている。メロディアスなベースラインがいかにもポールらしい。アルバムからのファーストシングルとして発売された。

 "She's Given Up Talking"はアコースティックに始まるがすぐにエフェクトのかかりまくったドラム(ポールが演奏している)がかぶさってきて、ヘヴィーなムードに変わってしまう。だが哀愁を帯びたメロディーやアコースティックギターのフォーキーな響きは最後まで生かされていて、このエフェクティヴなプロダクションと絶妙のミスマッチを見せている。

 "1,2,3,4,5 Let's Go For A Drive"よくこんな覚えやすいフレーズ思いついたもんだ。アルバムタイトル曲"Driving Rain"の歌詞だが、歌詞だけでなくメロディーも覚えやすく、見事なポール節ポップナンバーだ。サウンドもあまり凝ったところはなく(オープニングの打ち込みのリズムくらいか)、凄く聴きやすく出来ている。今回のアルバムではポールはいつになくよくシャウトしているが、この曲でもポップさを損なわないバランスを保ちつつ、叫びまくっている。

 "I Do"は"Put It There"あたりを彷彿とさせるアコースティックな小曲だ。ポールファンの多くが大好きなタイプの曲だろう。この手の曲に欠かせないストリングスは今回はサンプリングによるものだが、非情に気を使って演奏されていて違和感はない。80年代ならジョージ・マーティンがプロデュースしただろうと思わせる曲だ。インドで作曲したらしいが、ポールはインドに行くとこういうアコースティックな曲を書く。多分アコギしか持っていかないからだろうけど。

 "Tiney Bubble"はクールなサウンドプロダクションが印象的だ。こういうファンキーなリズムとオルガンの組み合わせは意外とポールには無かったタイプで、アメリカ人のメンバーで録音されているのにいかにも「ブリティッシュ・ロック」という感じになっている。極論すればちょっとモッドな気分でも聴ける、俺みたいな人にはたまらない曲かも。

 "Magic"は打って変わって80年代以降のポールを代表するような曲調とサウンドを持った曲だ。アルバム中でも特に厚みのあるサウンドに仕上がっていて、その辺も80年代風に聞こえる所以か。但しエンディングのドラムとバイオリン(シンセだが)のパートは急に90年代以降っぽい。

 "Your Way"もアコースティックな曲で、むしろこっちの方が"Put It There"っぽいか。得意の「膝叩き」も入ってるし...コーラスパートが「ビートルズっぽくなった」とポールは思ったらしいが、俺にはポールのソロ独特に聞こえる。と言うか、このパートは明らかにリンダが歌うことを前提に書かれているように聞こえる。もう完全にクセになってるんだろう。

 "Spinning On An Axis"は気持ラップ調のヴォーカルといい、アコースティックギターとリズムの絡みと言いまるで「オディレイ」の頃のベックのような感じのする曲だ。ポールの狙いがどうだか知らないが「最新型」とは言いにくいサウンドだが悪くはない。ドラムのビート感がいい感じなので今っぽく響くのかもしれない。息子のジェイムズと共作し、彼がパーカッションで参加している。

 "About You"は重いリズムを持ったロックナンバーで、ブレイクの作り方と歯切れの言いギターが印象に残る。アルバム全体にも言えるがかなりライヴ感覚の出た曲だ。

 ビートルズ時代の未発表曲にも同名の曲があるがそちらの"Heather"はリンダの娘のことを歌った曲だった。今回は別の曲で、勿論ヘザー・ミルズのことをテーマにしている。ほとんどインストで最後に歌が出てくるが、メロディーといいサウンドといいウイングスの未発表曲といった趣だ。しかし「愛するヘザー」って邦題は...2001年なんだから。

 もう1曲のジェイムズとの共作"Back In The Sunshine Again"はかなりブルージーな曲で、スライドギターはジェイムズが弾いている。バッキングのピアノが黒っぽくていい感じに響く。ポールだったらライヴのリハーサルでプレイしたくなりそうな気がする(イメージだけだけど)。

 今回比較的少ないバラードの"Your Loving Flame"では唯一生のストリング・カルテットが使われている。ここ数年のポールだったらアルバムのラストに持って来そうな壮大なバラードだが、この位置に収まっている。さすがに得意なタイプで「そうそう、これこれ」と聞き入る人も多そうだ。ファンが何を求めているか、この人には解っちゃってるんである。あざとい、が、好きだ。

 いかにもインドで書きました、インド音楽の影響受けてみました、と言う感じの"Riding Into Jaipur"だが、実はシタールが入ってなかったりパーカッションがアフリカンドラムのサンプリングだったり、微妙にひねりが効いてるのがミソ。メロディーは密かによくて、隠れファンが続出しそう。しかしジョージが聴いたらどう思うのかね。

 (本来の)ラストナンバー"Rince The Raindrops"はジャムセッションを元に作ったナンバーで、その感覚をそのまま残したせいか何と10分以上にも及ぶ大作になっている。しかし、組曲指向の病が再発したか、様々に展開して意外に飽きさせず一気に聞かせる。また、ポールの大作には珍しく終始ハードなイメージなところも特徴的で、「本当のバンド」だった筈のウイングスにも無かったこういう曲を出してくるところが面白い。人間が丸くなったのかも知れない。人間丸くなった結果がこんなハードな曲。結局今っぽいプロダクションを施した曲よりこういう曲の方がポールの「現役感」を感じさせてくれるんである。

 例のテロ事件で急遽作曲、レコーディングして既に完成していたアルバムに加えられたのが"Freedom"だ。そういう意味でもこの曲はアルバムとは別、ボーナストラックと捉えたい。しかしこの極端にありふれたタイトルに安易な曲を危惧していたのだが、これが予想以上の名曲。世界一覚えやすいメロディーに解りやすい歌詞。1回聴いたらもう歌えるでしょ?ポールはこうでなくちゃ、っていう曲で、嬉しいおまけとなった。

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