Back To The Egg

Wings

Paul McCartney / Vocals , Bass, Guitars & Keybords
Denny Laine / Guitars, Bass & Vocals
Linda McCartney / Keybords, Percussions & Backing Vocals
Laurence Juber / Guitars & Backing Vocals
Steve Holly / Drums & Percussions

Black Dyle Mills Band / Brass
Mr.Margoly / Spoken words

Rockestra

Pete Townshend, Denny Laine, Laurence Jubber, Dave Gilmour, Hank Marvin / Guitars
John Bonham, Kenny Jones, Steve Holly / Drums
Paul McCartney, John Paul Jones / Bass & Piano
Ronnie Lane, Bruce Thomas / Bass
Gary Brooker, Linda McCartney, Tony Ashton / Keybords
Speedy Acquaye, Tony Carr, Ray Cooper, Morris Pert / Percussions
Howie Casey, Tony Dorsey, Steve Howerd, Thaddeus Richard / Horns

SIDE 1

Reception
Getting Closer
We're Open Tonight
Spin It On
Again And Again And Again
Old Siam Sir
Arrow Through Me

SIDE 2

Rockestra theme
To You
After The Ball / Million Miles
Winter Rose / Love Awake
The Broadcast
So Glad To See you Here
Baby's Request

 そりゃあまあ、結果としてはウイングスのラストアルバムである。そして内容的にはあまり評価されない傾向にある作品で、まあ久々にちょっとコケちゃった感は無きにしもあらず、ってのは事実。曲もちょっとだけ中途半端だし、新メンバーを迎えてバンドとしてはこなれきってない感じもある。「元○○!」って看板の無い二人のメンバーの存在感は地味で、しかもこのラインナップでは1枚しかアルバムが出なかったのでセッションマン的に見えてしまうところもある。
 こうやって欠点をあげつらうことが出来てしまう時点でちょっとヤバイのだが、まあ、ミーハーであるこの俺は例によって好きなアルバムなのである。

 ポール自身は相当気合いが入っていたと思われる。ロッケストラは勿論のこと、アルバムの構成には"Venus And Mars"の再来的なモノを狙っていた節も見受けられる。そういえば「惑星」と「卵」どちらも丸いものをモチーフにしたタイトルだ(関係無いと思われる)。と、思ったらこっちにも惑星(地球)がジャケに写ってるし...

 「序曲」である"Reception"はマッカートニー流インストファンクロックか?タイトル(「受信」という意味もある)にひっかけてラジオの音が混じってくる趣向はジャケの印象と併せてどこかSF風に響く。良く聴くと"The Broadcast"の断片(こちらも「ラジオ放送」の意味)が混じってくるのは、トータルアルバム風狙い。

 そして間髪入れずに始まる軽快&ポップなR&Rナンバーが"Getting Closer"だ。ここでも歌詞にラジオが登場して前曲からの流れを強調する。シングルにもなったがあまり売れなかった。これは勿体ないと思う。"Junior's Farm"や"Helen Wheels"にも劣らないポール流R&Rの名曲なのに。過去のドラマーに比べればオーソドックスながら、ポールが重視するという「タムの使い方」が絶妙なスティーヴ・ホリーのプレイもじつにタイトだし、ローレンス・ジュバーも印象的なギターを弾いている。新生ウイングスの名刺替わりにはうってつけだと思うが。
 ブートで聴けるデニーがヴァースを歌ったテイクもあるが、これはやはり印象が弱い。いくらデニーファンの俺でもポールが全て歌ったのは大正解だったと思う。

 この位置に"We're Open Tonight"の様な小曲を持ってくるのはポールの定番パターン。"Love In Song"や"I'm Carrying"のパターンだ。ジュバーの12弦ギターやリンダ(?)のシンセがちょっと不安定な足場を作り、そこに美しいメロディーが乗るというミスマッチがポイント。サイケデリックな印象も。
 ラスト前にこの曲のコーラスが繰り返され、「トータルアルバム風」演出の効果も出している。

 多分ポールの曲で一番テンポが速い"Spin It On"は、パンク/NWのスタイルの表層を取り入れた曲で、影響を受けたというより例によって「よし俺もやってやれ」的な曲と思われる。こういうところはポールの短所とも言い切れず、純粋に「音楽」のみを追及するという意味ではむしろ長所。
 ただし必ず成功するかと言ったらそれはご存知の通りで、この曲もただひたすらテンポを上げただけ、といった感もあるのもまた事実。まあ、この無闇矢鱈なスピードは笑えるが。ダムドの"Love Song"と同じくらい速い。

 デニーのヴォーカルは今回1曲のみとなった"Again And Again And Again"は前作の"Children Children"にも通じるミドルテンポのポップな曲。カントリー風を感じさせながらもあくまでイギリス音楽って言うのはデニーの面目躍如。ジュバーの速いフレーズのギターもいかにもそれっぽくてよい。

 "Old Siam Sir"の方がむしろNW的なサウンドを取り入れてるんじゃないだろうか。過剰な印象さえあるシャウトやころころ変わるビート、スラップ風のフレーズも出るベースやシンセの音色など、全てが異質。この異質な曲がシングルになってしかも"Getting Closer"より順位が高いってんだから笑ってしまう。
 リンダが一番好きな曲だというが、勿論俺も大好き。こういうのをバッチリ決めた時のポールは本当に凄い。

 "Arrow Through Me"はいつもならギター中心の小曲として処理しそうな曲だが、シンセをフィーチャーしたある意味「テクノポップ」風の曲になっている。そういう意味では次回作(既にポールは個人的に録音を始めてた筈)に繋がる作品とも言える。
 リズムボックスとシンセ、ブラスとシンセベースがバッキングを務めており、ギターは殆ど聞こえないのが逆に特徴的。これがまたずっぱまりのアレンジで、ポップ極まりないメロディをよく際立たせている。そう言えば"With A Little Luck"に似たアレンジでもある。ブレイクで聞こえるフレクサトーン(とぅ〜ん、って感じのパーカッション)もミソ。

 アナログB面は鳴り物入りの"Rockestra Theme"で始まる。タイトル通りの「ロック版オーケストラ」で、ポイントはジャズのビッグバンドとかじゃないので派手なソロ回しは一切無いということ。要するに人数揃えてダビング無しで分厚い音を出すというのがコンセプト。それも善し悪しだが、ボンゾやピート、ギルモアといった人達の独特のプレイスタイルが生かされているとは言い難く、その辺は残念。分厚い音もミックスが原因でスポイルされている感も無きにしもあらず。しかし、映像版を見るとやたら一杯人がいて楽しい(ウイングスパンDVDに収録されている)。
 カンボジア難民救済コンサートでは多少のメンバーチェンジをしてライヴ演奏された。

 "To You"もいかにもこの時代をイメージさせるNW風のサウンドを持つアップテンポのロックナンバー。サビ入口の言葉を細切れにするような歌い方が特徴的だ。ヴォーカルパートは全体的に("Old Siam Sir"同様)一風変わったトーンで歌われている。そのイメージを全体に貫きたかったのか、ギターソロもハーモナイザーを使ってちょっとギターシンセの様な感じにも聞こえるように作られている。

 ここからの3曲がスロー系の曲の連続になるため、B面はロッケストラ以外地味目の印象になるのだが、コントラストを意識した構成なんだろうか。
 その最初の曲が"After The Ball / Million Miles"で、ポール得意のメドレーだ。前半"After Tha Ball"3拍子のリズムで、R&B、というよりゴスペルの影響を強く感じさせる曲。派手なコーラスを入れても似合いそうだがあくまでシンプルなバンド演奏になっている。
 続く"Million Miles"はゴスペル風を更に進めて教会音楽をイメージしたようなサウンドになる。パイプオルガンを使わずアコーディオン(に近いが、コンチェルティーナという楽器だそうだ)の音をフィーチャーするアレンジがナイスなセンス。

 次もメドレー。"Winter Rose / Love Awake"はともにバラード風の曲調を持つが、タイトル通りのサウンドで変化を持たせている。その前半部、"Winter Rose"は寒い冬の情景をサウンドにしたような寂しげで、しかも美しいバラード。かすれたようなヴォーカルがその雰囲気を強調する。個人的には一番好きな曲だ。
 後半は一転して明るい雰囲気になる。これまた"Love Awake"というタイトルそのまま、と言ってもいいだろう。誰が聴いてもここで春が来たと思える曲調、サウンド。このコントラストは絶品。エンディングで再びマイナー調に戻り、歌詞にも「冬」が登場するがすぐに暖かい曲調に戻って終わる。ポールの構成力の凄さを思い知るメドレーだ。

 "The Broadcast"は一種のインタールード。クラシカルなピアノをバックに格調高い詩の朗読が乗る。これもバラード続きのパートから再びロッケストラ登場への繋ぎとしての機能がメインと思われる。曲としてはまあ、こんなもの。

 再登場のロッケストラ、今度はヴォーカルナンバーだ。"So Glad To See You Here"はビッグバンドをバックにポールがシャウトしまくるパワー溢れるロックナンバー。ここでもバンドは余計なことをせず、分厚い音を出すことに専念している。音はこっちの方がよりダイナミックに聞こえる気がするが気のせいか。
 前述の通りエンディングには"We're Open Tonight"のフレーズが繰り返されるが、この部分はロッケストラとは別に編集で繋げられたように聞こえる。ちなみにヴォーカルパートは全てウイングス。

 前曲で終わらずこうやって「アンコール」"Baby's Request"を持ってくるのがポールらしいところ。しかもジャズ風の小曲で締める、と言うのもニクい。オーソドックスで古風なジャズの雰囲気をポール流に再現している。ジュバーの丸みのある、いかにもジャズギターという音色もツボを押えていてよい。

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