London Town

Wings

Paul McCartney / Vocals , Bass, Guitars, Drums, Recorder,Violin & Keybords
Denny Laine / Guitars , Bass, Recorder & Vocals
Linda McCartney / Keybords, Percussions & Vocals
Jimmy McClloch / Guitars & Percussions
Joe English / Drums , Percussions, Harmonica & Vocals

SIDE 1

London Town
Cafe On The Left Bank
I'm Carrying
Backwards Traveller / Cuff Link
Children Children
Girlfriend
I've Had Enough

SIDE 2

With A Little Luck
Famous Groupies
Deliver Your Children
Name And Adress
Don't Let It Bring You Down
Morse Moose And Grey Goose

 俺が一番好きなウイングスのアルバムは実はこれだ。ウイングス作品としては最初に買ったのがコレって言う思い入れもあるが、なんていうか、サウンドの質感が一番しっくり来るのだ。グラムロックの影響さえ感じさせた時期を抜け、タイトル通りポールの祖国イギリス(と、アイルランド)を感じさせる作風。これが俺には不思議なくらいしっくり来るのだ。
 最強メンバー時のラストアルバムでありながらジャケには3人しか写っていないのは録音途中でジョーとジミーは脱退したため。完成間際にはリンダも産休に入ってしまい、事実上デニーとポール、二人で仕上げられたアルバム。前述の通りいかにも英国という音だが、実はヴァージン諸島附近の洋上、ヨット内にスタジオを設えて録音されたアルバムなのは有名だ(一部はいつものアビイ・ロードスタジオ)。要するに(Band On The Runもそうだが)ポールにとってロケーションというのは気分転換レベルを超えないものであり、どこにいようとその時に浮かんだ音というものはゆらがないんだろう。また、この「英国風」と言う部分において(後述するが)ウイングスのアルバム中最もデニーの音楽的貢献の高いアルバムであると言える。

 オープニング"London Town"はまさしくロンドンの霧のかかった、肌寒そうな光景をそのままサウンドにしたような曲だ。どこかメランコリックなメロディは明るい感じと物憂げな雰囲気の中間で行ったり来たりする。紫の午後、銀色の雨、ピンクの風船といったカラフルな歌詞が出てくるのに音はあくまでモノトーンだ。中間部のスライドギターのソロ部分では複雑なドラミングとともにリズミックでハードな雰囲気になるのに、曲のカラーはそんな時にも変化しないのが不思議。何から何まで妙に幻想的な曲なのだ。デニーとの共作で、今回彼が関わった曲にはこの「英国臭」がやたらに強く漂う。

 "Cafe On The Left Bank"はマイナーキーのロックナンバー。ジミーの太く、流麗なギターサウンドが印象的。何やら不思議な光景が歌詞に歌われていて、曲がマイナー調なのとも相まって"London Town"同様、微妙な別世界観が漂う。この辺の雰囲気がアルバム全体を支配していくのだ。

 "I'm Carrying"は基本的にポールのソロレコーディングによるアコースティックなバラード。この手の曲の定位置にこの曲が入っているのでとても安心感がある。っていうか、エラく和む曲なのである。精神的にまいってるときに聴いて、マジで癒される気分になったときには驚いた。ゴドレー&クレームの開発したギズモと言うエフェクターを使っているのは有名。

 "Backwords Traveller"の録音はジミーとジョー脱退後、3人(って言うか、多分事実上二人)で行なわれた。非常にシンプルなR&Rで、ここまでの幻想的な雰囲気から抜け出した感じがする。しかし、メドレーで突入するインストナンバー"Cuff Link"はまた一種異様な世界へいざなっていく。こちらはポールのソロレコーディングで、彼が一人でインスト曲を演奏するときの典型的スタイル及びサウンドだ。

 デニーが主に作り、自ら歌った"Children Children"は英国/アイルランドのフォーク系の音楽の影響を感じさせる曲だ。こういうアーシーな曲にはデニーのヴォーカルは良く映える。妙にへろへろした下手糞なヴァイオリンは何事かと思ったらポールが弾いてるんだそうだ。まあ、これはこれでいい味であるが。

 "Girlfriend"はポールがジャクソン5にプレゼントした曲で、実際彼らに似合う感じのスウィートなソウルナンバーになっている。ポールがファルセットで歌うのもマイケルを意識してのものだろう。一見浮いてるようなギターソロのパートも良いアクセント。

 "I've Had Enough"は典型的なR&Rリフを下敷きにしたハードなナンバー。ひたすらポールのどんどん崩しまくっていくシャウトを聴け!って言う感じである。ハードシャウターとしてのポールを堪能できる。勿論、バンドのグルーヴあっての激しいシャウトであることも言うまでも無い。

 B面トップを飾るのは"With A Little Luck"。シンセをメインにした柔らかいサウンドとポップで親しみやすいメロディ。ポール・マッカートニーここにあり!な感じだが実はこの曲でも後半、アドリブが炸裂する。この柔らかい感じと熱い部分のコントラストが素晴しいのだ。タイトルをくり返すリンダとデニーのコーラスも覚え易くていいね。ちなみにビデオクリップにはこの後正式加入するスティーヴ・ホリーが出演している(アルバムでのドラムはジョー)。また、同ビデオのヴァージョンは中間部が編集されて短くなっている。

 "Famous Groupies"はポールの物語路線、しかもナンセンス系の系譜にある曲で、例によって曲、詞ともにコミカルだ。英国フォークとアフリカンビートの中間のような不思議なサウンドに乗せてグルーピー(この歌詞だとまるで化け物のようだ)の被害に遭うミュージシャン達が歌われていくが、例えばボンゴ・プレイヤーならボンゴ、リード・ギタリストならエレキ(スライド)ギターのソロがフィーチャーされるなど、歌詞に合わせたサウンド作りがされていてどこか演劇調でもあるのだ。

 "Deliver Your Children"はデニーが歌う2曲目。この曲もフォーク風のサウンドで、ギターはスパニッシュ風にも聞こえる。今回のアルバムはこういう「英国風+他の国風」が絶妙に混ぜられている曲が多く、どうやらその「英国風」のパートにはデニーが強力に関わっている感があるのは既に述べた通り。リンダの産休のせいもあってか、このアルバムは過去に無く「ポール&デニー」の作品という印象を残している。ここでのデニーの貢献はもっと語られるべきだと思う。なお、個人的にはこの曲がデニーの諸作の中でも特に好きだ。

 "Name And Address"はポール得意のエルヴィスの物まねが聴ける。まあ、ほとんどパロディのような曲で、特にどうって亊の無い曲だが単純に楽しい。なお、ジョーとジミー脱退後の録音で、ポールがドラム。妙に上手い。だらしないエンディングは、まあワザとなんだが。

 "Don't Let It Bring You Down"は最もアイリッシュ色の強く出た曲で、勿論デニーとの共作だ。イントロのフラジオレットなるアイルランドの縦笛の物悲しい音色が印象的に響く。全体をアコースティックなサウンドが支配する中、最初から最後までほとんど弾きっぱなしのジミーのエレキギターが実に最高なミスマッチ。このアレンジって普通思いつかない。これを思いつくポール(だろう)も凄いが、ここにぴったりのフレーズを弾き続けるジミーのセンスもいい。

 ラストを飾る大作、"Morse Moose And Grey Goose"はずっとパルス状のサウンドが鳴り響くなか、ファンク的だったりフォーキーだったりと、様々なサウンドが顔を出す何やら凄い曲だ。テクノ的な発送もあるよね。メインのパートの"Morse Moose"部分はファンキーなビート(ジョーのプレイが冴え渡る)に乗せてポールがハードにシャウトする。そして"Grey Goose"パートは一転、フォークっぽくなるのだが、パルスは鳴り続け、シンセのソロは去来して何やらコズミック・フォークという味わいだ。これもポールとデニーの共作で、デニーのセンスはこの"Grey Goose"パートに発揮されてると見るのが自然だろう。後半でのバンド一丸となっての盛り上がり(一瞬デニーのソロヴォーカルも)は必聴だ。

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