Venus And Mars

Wings

Paul McCartney / Vocals , Bass, Guitars & Keybords
Denny Laine / Guitars , Blues Harp & Vocals
Linda McCartney / Keybords & Vocals
Jimmy McClloch / Guitars & Vocals
Joe English / Drums , Percussions & Vocals
Geoff Britton / Drums

Howie Casey / Saxophone
Tony Dorsey / Trombone
Thaddeus Richard / Saxophone & Flute
Steve Howerd / Trumpet

Allen Toussaint / Piano
Tom Scott / Soprano Saxophone
Dave Mason / Guitar
Afro / Congas

SIDE 1

Venus And Mars
Rock Show
Love In Song
You Gave Me The Answer
Magneto And Titanium Man
Letting Go

SIDE 2

Venus And Mars -reprise
Spirits Of Ancient Erypt
Medicine Jar
Call Me Back Again
Listen To What Tha Man Said
Treat Her Gently / Lonely Old People
Crossroads

 公平に見て「ウイングスの最高傑作」はこれ、と言うことになるだろう。世間では"Band On The Run"と言う扱いになるようだが、俺はそうは思わない、と言うのは同アルバムの項に描いた通り。実際にはバンドとしての充実度、アルバムの構成、楽曲の粒、豪華ゲスト(後述)、ヒプノシスによる(手抜き気味の)素晴らしいジャケットと、全てにおいてこのアルバムの方が勝っている。
 例のごとく傑作はゴタゴタのうちに完成しており、今回もレコーディング途中で2代目ドラマーのジェフ・ブリトンが脱退(空手スターになるためだとよ)しており、怪我の功名というべきかウイングス最強ドラマー、ジョー・イングリッシュを得ている。

 アルバムのオープニングであり、タイトル曲でもある"Venus And Mars"、オープニングというよりイントロと言った趣もある小曲だが、基本的にギターの弾き語りながらタイトル通りのコズミックな演出をするシンセのサウンドが(時代を感じるものの)印象的だ。

 タイトル曲に導かれて始まるのがウイングスのスペクタクルショーの幕開け、その名の通り"Rock Show"だ。ポールらしい大作的な作りのゴージャスなR&Rであるこの曲、ジミーのスライドギターとタイトで変則的な(ポール好みの)ドラミングをするジョーによって支えられている。中間部の「Oi!」の叫び声がパンクを先取りしている?しかしあの性急なリズムはどこにもないが。歌詞には何故か突然ジミー・ペイジが登場するが、意図は不明。
 エンディングにはファンキーなピアノソロが登場するが、これはニューオーリンズの大御所、アレン・トゥーサンによる演奏(勿論曲中も)。アルバムの数曲はこのブルース、ジャズ、ファンクの名所で録音されているのだ。このパートは残念ながらライヴでは再現されることはなかった。

 ポール得意の弾き語り小曲路線の"Love In Song"(と言ってもバンドで演奏されているが)のメロディーが微妙に東洋風味入ってると思うのは俺だけか?イントロのアコギの響きとか、ちょっと不思議な感じで気持ちいい。ドラムはジェフ・ブリトン。この頃のウイングスの曲は「リンダにも弾ける程度の簡単なシンセのフレーズ」が効果的に使われているものが多いが、これもその一つ。"Love In Song"って言うくらいだからな。

 "You Gave Me The Answer"はビートルズの"Honey Pie"の続編とでも言うべき曲調のジャジーな曲。ディキシーランドジャズやミュージカルのサントラ風のサウンドで、ポールのヴォーカルも昔のマイクを通した風に処理されている。このての曲が似合うロックバンドはウイングスとキンクスくらいとはよく言ったものだと思う。クラリネットソロはタデアス・リチャード。

 "Magneto And Titanium Man"は邦題の間違いからただしておこう。「磁石屋とチタン男」ではない。「マグニートーとティタニウム・マン」だ。クリムズン・ダイナモも含め3人ともマーヴル・コミックスの悪役だ。ただし本来の役柄と無関係に名前を使っているだけだが...
 曲調はグラムロック風のブギーをエレピでやった感じ。このての物語風の歌詞をまくし立てるスタイルは後の"Famous Groupies"や"Old Siam Sir"でも見られる、得意路線の一つ。

 "Letting Go"も初期のセッションでの録音で、ブリトンがドラム。けだるい曲調にヘヴィーなリズム、パワフルなホーン、そしてジミーの最高のギターと、素晴らしい演奏が展開されている。場所によってリンダとデニーのバックヴォーカルを使い分けるアレンジも見事。

 タイトル曲のリプライズという手法が大好きなポールだが、"Venus And Mars"のリプライズは「ペパー」とは逆にオリジナルより長くなっている。こちらもコズミックなアウトロだが、徐々にエキゾティックな雰囲気になっていき...

 その雰囲気を受けて始まるのが"Spirits Of Ancient Egypt"、デニーのヴォーカル曲だ(作者はポール)。これもブギー風のシャッフルだが、エキゾティックな味付けは中東風なのか東洋風なのかよく解らない。中間部は一瞬ポールとヴォーカルを交代する。

 前曲とリズムは似ているがもっとハードな"Medicine Jar"はジミー作で彼が歌うドラッグソングだ。ドラムはブリトンが担当。全編でジミーのギターが大活躍するナンバーで、ライヴでもよく映えていた。個人的にはこのアルバムのハイライトの一つ。

 "Call Me Back Again"はファッツ・ドミノの影響を感じるニューオーリンズ風ソウル。勿論現地での録音だ。このタイプの曲でのポールのシャウトは相変わらず見事。バックではジョーのドラムのシンバル類の使い方に注目。要所要所をうまく盛り上げている。そしてトニー・ドーシーのアレンジによるホーンも素晴らしい。勿論いつものホーンセクションが演奏。ジミーもブルージーだし。

 "Listen To What The Man Said"のポップさは凄い。そりゃあナンバー1にもなろうというものだ。全編を通して聴ける最高のソプラノサックスはトム・スコット。ジョージのツアーメンバーとしても知られるが、ここでの演奏は何と本人はリハーサルのつもりで吹いたものだった。しかしあまりにも完璧なフレーズで、ポールのライヴではタデアス・リチャードが完コピしている。また、ギターではデイヴ・メイスンも参加(そう言えば彼もジョージ人脈だ)。
 後半部は間奏が入るごとにコーラスパートが増えて盛り上がっていくというアレンジで、単純な曲を効果的に聴かせている。

 前の曲からそのまま"Treat Her Gentry 〜 Lonely Old People"に繋がる。この曲はメドレー的に表記されているが、実際には2曲が交互に出てくるアレンジで、乱暴に言うなら"Little Lumb Drugonfly"を"Little Lumb〜Drugonfly"と呼ぶような感じか。それはともかく、個人的に大好きな曲で、物悲しい曲調にジミーのギターが泣いていてやたらにいい気分なのだ。

 "Crossroads"は当時のイギリスの同名ドラマのテーマ曲だったそうで、ポールの曲ではない。いかにもクロージングって感じだが、どうも個人的には蛇足に聞こえる。どこか途中に"My Carnival"でも入れてこれは入れないほうがよかったのでは...

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