I Can't Take It
I Don't Mind
Love Me Do
Midnight Caller
No Matter What
Without You
Blodwin
Better Days
It Had To Be
Watford John
Believe Me
We're For The Dark
「ビートルズの弟分」とか、自殺者2名を出した「不幸なバンド」という語られ方。どうにもバッドフィンガーの扱われ方って、いい感じとは言い難い。しかも現在アップル時代のアルバムは廃盤。聴くことさえままならないっていう状況が更に辛い。移籍後のアルバムは安く手に入るし、それも悪くはないが、やっぱりアップル時代、特にこのアルバムの完成度は超一流だ。もう全曲が一級ポップ。捨て曲があまりにもないので一瞬ベストアルバムかと勘違いして、しばらく経ってから「あ、"Come And Get It"も"Day After Day"も入ってなかったぞ」と気がつくという有り様なのだ。このアルバムを廃盤にしておくアップル/EMIは自らの犯罪行為に気がつかねばならない。(注:2005年に紙ジャケでリイシューされた)
<さて、どのくらいポップかというと、「ポール・マッカートニーでさえもここまでは!?」と言うほど。特にあの超名曲"No Matter What"(「嵐の恋」って邦題、何考えてたんだ?)。単純に計算しても東京タワーの40倍、東京ドームを500回満杯に出来るほどのポップなメロディなのだが、俺もうちょっと落ち着いて文章書けよ。
真面目にやろう。この曲、とにかくどんな違法な手段を使ってでも聴いてみて欲しい。とりあえず1回聴く。どうです?覚えちゃったでしょ。もう1回聴く。「のまらわっちゅ〜あぁ♪」既に合わせて歌っているあなたがいる。サビはちょっとキーが高くて歌いずらいが、まあ、数回聴いたあとには多分あなたの鼻歌ヘビーローテーションに乗っているはずだ。最終的には自分のバンドのライヴで気持ち良く熱唱するところまで行ってしまう筈・・・ってそれは、俺だ。
勿論この曲ばかりではない。捨て曲は無いと宣言したのはよもや忘れておるまいな?例えば軽快に飛ばすR&Rの"I
Can't Take It"はアルバムの幕開けに最高だし、"I Don't Mind"出だしのコーラスとギターのアルペジオの美しさ、それに抑制されつつもタイトなリズムも感動的。
続く"Love Me Do"はビートルズの同名ナンバーを遥かに上回るパワフルなロックナンバーだ。だいたい、アップルからこのタイトルの曲をリリースするってのも度胸があるよな。結構な大者である。
カントリーっぽい"Blodwin"は音楽性の幅広さを見せつける。特にこの後どんどんアメリカ寄りの音楽性になっていくバンドの未来を予見させる曲だ。
"Better Days" もアメリカっぽい雰囲気だが、これはもうちょっとスワンプ風だ。ポップなだけでなく、バンドのグルーヴも絶品である。このサウンドにはジョージ周辺との交流と関係があるのか・・・とか考えると楽しいかも。
"Watford John"はエルヴィスの"Don't Be Cluel"を下敷きにした様な曲で、実は同曲(エルヴィスの方ね)のチープ・トリックのテイクはこの曲(バッドフィンガーのね)のアレンジに影響されてるんじゃないか、って気がする。っていうか、完全に先取りしてる。新旧パワーポップバンド・・・って考えるとあながち的外れじゃないと思うんだけど。
もう1曲、超有名曲があるね。ってーか、この曲のオリジナルがバッドフィンガーって知らない人も多いんだろう。それは勿論"Without
You"で、ピート・ハムとトム・エヴァンズの曲を合体させたバラードだ。多分ニルソンやマライア・キャリーで知った人が多いはずだが、俺はこのオリジナルが圧倒的に好きだ。マライアは捨てとくとしても、全然上手いニルソンの歌より、ピート(だよね?)の歌の方が何か「来る」のだ。あえてこういう曲でピアノよりギターを前に押し出したのもいい感じだ。
ちなみにこのアルバムには"Midnight Caller"や"It Had to Be"(ドラマー、マイク・ギビンズ作曲!)、"Believe
Me"みたいな名バラードが他にも入っているぞ。特に"Believe Me"の絡んでるような、無いような、不思議なマッチングのツインリード・ギターのソロが素晴しい。3分無いのに大作に聞こえるスケール感も凄いな。
そしてラストの"We're For The Dark"。サウンド的にはピートの弾き語りから始まり、徐々に音が増えてスケールが大きくなっていくが、そのワリにはドラムレスでアコースティックな感触が失われないのがポイント。シンプルに徹するバッキングが美しいメロディを際立たせる。アルバムのラストに「どっかーん」と来る曲(ロックにしても、バラードにしても)を入れずにこの曲で締めたのは大正解。凄いいい感じの余韻でしょ。(CDだとこの後ボーナストラックが来ちゃうんだけどさ)