Odelay

Beck

Devil's Haircut

Hotwax

Lord Only Knows

The New Pollution

Derelict

Lovacane

Jack-ass

Where It's At

Minus

Sissyneck

Readymade

High 5 (Rock The Catskills)

Ramshackle

ご多分に漏れず俺も"Loser"でベックを知ったクチだ。当時のバンドのヴォーカリストが教えてくれて、まあ、これまたご多分に漏れず「ジェフじゃ無いんだ?」とか言った記憶も、ある。買ってみた"Loser"のシングルは案の定ツボにはまり、バンド内ではちょっとしたベックブームにもなりかけたが、不思議とデビューアルバム"Mellow Gold"は買わなかった。しかも未だに持っていないのである。

そんなこんなでしばらく忘れていたが、ある日たまたま見ていたTVでベックのスタジオライヴを見た。メジャー3作目"Mutations"が出るちょっと前という時期だったが、ライヴ自体は無関係にこの"Odelay"から2曲、必殺の"Devil's Haircut"と"Where It's At"だった。これが衝撃で、漠然と見ていたはずだが2曲目には間に合うように大急ぎでビデオをセット。1曲分だけの録画に成功したのだが、ここで本格的にベックにはまった。特に"Where It's At"は凄かった。

音楽もそうだが、実は「ベック」と言うバンドの魅力はそのステージにあると思う。徹底的に練り上げられた構成だが、特にフロント3人のクールとコミカルの境界が解らない動き。これが実にカッコ良い。ギターのスモーキー・ホーメルとベースのジャスティン・メルダル・ジョンセンの存在感は特にでかい。多分この2人がいなかったら俺は今までベックを無視していたんじゃないかとも思えるのだ。
 この3人が常にダンス(激しいものではなく、ロボットダンスに近い)したり、ポーズを決めたりしながらステージは進行するが、この動きが「必ずしもカッコ良くない」ってーかかっこいいラインを微妙に外してどこか馬鹿っぽい、でも表情やファッション、存在感自体はあくまでクール、と言うこの微妙極まりないバランス感。これが最高なのだ。

その一種異様なアンバランス感は彼(ホーメルもジョンセンもこのアルバムには参加していない!)の音楽にも当然現れているのだが、俺の見たステージの印象を再現(逆か)しているアルバムは実はこのアルバムだけである。前述のシングルカット2曲のジャンル分け不能な異様なロックぶりはアルバムでも健在だが、特に後者"Where It's At"はライヴは更に長さを増し、ごった煮感も50%アップなので何らかの形で聴いて、いや、出来れば見て欲しい。"New Pollution"や "Novacane","Sissyneck"あたりもこういう感覚を前面に打ち出していて最高に気持ちが良い。
 "Hotwax"の様な曲ではベック独特の(Gラヴあたりも近いことをやるが)ブルーズとヒップホップの融合っぽい亊もやっている。俺が好きなのはこういう、自然に融合しているようでいてやっぱり違和感が残る感じなのだ。この絶妙なひずみに吸い込まれそうな感覚・・・
 良く聴くとベック・ハンセンの声自体にそう言うひずみ感があることが解る。"Lord Only Knows"なんてストーンズみたいなカントリーロックで、特に仕掛けもないんだけどこの不安定感。そもそもベックのルックスも「そう言う感じ」じゃないか。"Jack-Ass"なんてきれいな曲なのに、なんだかそれだけじゃなくて不穏な感じがつきまとってしまうのはベック本人が最初から持っている資質みたいなものが原因か、と思うんだけど。

そうは言っても、この微妙な不安定感は次作以降薄れていく。"Mutation"はともかく"Midnight Valtures"、そして"Sea Change"と進むに連れてアルバムは完成度をそして安定感を増して行く気がする。アーティストとしては正しい進化だし、俺もこれらのアルバムも好きだけど、やっぱりベックにはこの異様さを求めてしまうのだ。だから俺のフェイヴァリットは多分、今後もこいつである。