ジャズ大名〜シェラ・マドレの山中
ジャズ大名〜香港行きグスタフォ・カンパ号
ジャズ大名〜お稽古
ジャズ大名〜地下・もぐり酒場
大名行進曲
Smoke Rings
I Surrender Dear
Everyone Says I Love You
活動写真
ジャズ大名
勿論俺は小説家筒井康隆のファンである。彼の作品の大半は読んでると思うが、やはり短編が好きなのだ。SF、ドタバタでスラップスティック&スプラッタな展開になる作品もいいのだが、ドタバタ色はあれど妙にほのぼの楽しめてしまう作品もあって、その中でも特に楽しくて大好きなのが短編集「エロチック街道」収録の「ジャズ大名」だ。
簡単にストーリーを追うと本当に簡単で、ニューオリンズからアフリカを目指す音楽好きな脱走奴隷が演奏しながら歩いていると、メキシコ商人に騙され香港行きの船へ。しかし船は転覆、日本に漂着した彼らは庵原藩藩主、海郷亮勝(ウミノゴウスケカツ)に拾われる。場内の座敷牢で暇つぶしにと演奏をする彼らにそもそも音楽好きでお調子者の亮勝は黙っておられず一緒に演奏をはじめる。遂にはクラリネットを覚えた亮勝、そして耳に付くメロディが自然に場内の者たちを巻き込んで次第に一大ジャムセッションに発展する...そして演奏が終わったときには時代は明治になっていた...というたわいの無いもの。
このストーリーをまさにスゥイングする文体で軽妙に綴っていくのだが、これはもう、ヴィジュアル、そしてサウンドが目に、耳に浮かぶのだ(実際、曲のテーマの譜面が載っているのだ、この小説は。)。う〜ん、楽しい...映像が見たいな...
と、思ったら、やはりあるのだ。86年に岡本喜八監督で映画化されているのだ。これをたまたまCSで見ることが出来た。...これが最高なのだ。うん、原作にも負けないジャズっぷり、スゥイングする時代劇。古谷一行演ずる亮勝は大名としてはぼんくらだがジャズメンとしてはイケてるというキャラを見事に演じていて川島なお美なんかと絡んでる場合ではない感じなのだ(古い)。爆笑しながら見ていたが現状でフェイヴァリット邦画になっているほどの名作と言えるのだ。
しかしこれは書評でも映画評でもない。
その映画のサントラがCDになったと聞いて、俺が聴かずにいられるものだろうか。まあ、実際のところ映画で使ってる音まるっきりまんまなんだけど、音だけで聴くとかえって普通のスゥイングからほとんどフリージャズに近い(山下洋輔&中村誠一だから当然といえるが)演奏に徐々に雪崩れ込んで行くあたりが非常にスリリングに響く。ちなみに曲は原作の譜面を元に演奏されており、即ち当然、作曲筒井康隆だ。また簡単だがちょっと哀愁漂う泥臭い旋律が結構良いのだな。
LPのB面に当たる後半5曲はサントラではなく、筒井自身がクラリネットを吹き、山下、中村や村上"ポンタ"秀一、仙波清彦(サントラにも参加)等を迎えて録音されたものだ。こちらに収録の「活動写真」も筒井作で、長編小説「美藝公」の主題歌である。俺は(他にも書いたが)この小説を読むとキンクスの"Celloid Heroes"を思い出すのだが、筒井とレイの「映画に対する愛情」「役者になりたかった俺」が出ている作品ということで共通していて、でもってこの曲もディキシー調で上手いことノスタルジックに作ってあって、その辺もレイに近いものを感じたり。
それにしてもこの作家、やたらに上手いのだな、クラリネット。