Freedom
Izabella
Night Bird Flying
Angel
Room Full of Mirrors
Dolly Dagger
Ezy Ryder
Drifting
Beginnings
Stepping Stone
My Friend
Straight Ahead
Hey Baby (New Rising Sun)
Earth Blues
Astro Man
In from the Storm
Belly Button Window
所詮未発表曲集、例えば伝説ともなっているビーチ・ボーイズの「スマイル」の様な、アーティストが完成させられなかった作品。乱暴に言ってしまえば、あれはブライアン・ウィルスンに力がなかったという話であり、どう考えたって最高傑作などにはなりえなかったアルバムだ。実際ブート以外ではリリースさえされていない、と言う現状もあるし。
例えばビートルズの「アンソロジー」シリーズその他諸々。逆にこれらはなんのまとまりもない形のまま素のアーティストを聴けるものとして存在する。最高傑作どころか、オリジナル作ともとても呼べない。「ビートルズはアンソロジー2が最高だね」なんて言ってたら殴られるかもしれないのである。
このアルバム、"First Rays Of New Rising Sun"は確かにそういう性格のアルバムだ。生前のジミが完成させられなかった作品であり、そういう意味では「スマイル」に近い。ただ、ジミに足りなかったのは完成させるための力ではなく、命だった、と言うのが大きな差だ。
その作品を当時からのプロデューサーであったエディ・クレイマーがまとめ直したのがこのアルバムで、その点では「ジミ・ヘンドリクス・アンソロジー」の一部、とも言えるかもしれない。ただ、これらの曲は(大半が)一つのアルバムのための作品、と言う点が大きく違う。「"First Rays..."が最高!」と叫んでも殴られないと思うのだ。俺は。これは完成しなかったジミのオリジナル作で、彼がもう1年生きていればこれに近い形で71年頃のニュー・アルバムとしてリリースされていたはずなのだ。
こんな長い前置き(いつもか)が必要だったのは勿論俺が「"First Rays..."が最高!」って言う人だからで、要するに自己弁護(=言いわけ)だったんだけど、掛け値なしにいいアルバムだ、と思う。曲がいい。俺のフェイヴァリットナンバーは"Izabella"なんだけど、リズムがファンキーなだけじゃなく、メロディーがポップ(ジミは結構メロディーメーカーな所がある)なのもいい。2000年に出た4枚組ボックスにはもっと乱暴な別テイクが入っていて、そっちもまた最高なんだけど。
このアルバムではやっとたどり着いたビリー・コックス(B)+ミッチ・ミッチェル(D)の最強リズムセクションがその力を遺憾なく発揮する。例えばオープニング曲の"Freedom"(これもファンキーな名曲)。このアルバムからの先行シングルのはずだった"Dolly Dagger"。ウッドストックでもおなじみの"Beginnings"(その時は"Jam Back At The House"と言うタイトルだった)...etc。
ドラマーは他にバンド・オブ・ジプシーズで叩いていたバディ・マイルズも参加している。ミッチよりタイトだが、下手するとミッチよりファンキーさに欠ける。でも"Room Full Of Mirrors"等では最高のドラミングを聴かせる。他にもウッドストックで一緒だったジュマ・サルタン(パーカッション)や、変わったところではトラフィックのスティーヴ・ウィンウッドとクリス・ウッドがバッキングヴォーカルで参加している。
勿論問題点が無いとは言えない。どんなに素晴らしい曲の集合とはいっても、やはりジミ本人の意志が入っていないという印象はどうしてもぬぐえない。「素晴らしい曲の集まり」出会って「素晴らしい1個の作品」では無いのは、それは仕方がないんだろうけど。
それと、ジャケットが良くない。なんかフォトショップで簡単に作りました、って感じなんだよね。なんか、素材さえあれば俺でも作れそうな安っぽさは大減点でしょう。多分このジャケ見て買わない人いると思うなあ。
気になるのは、ジミがちゃんとこれを出してたら、なんという名義での作品だったんだろう、と言うこと。初の「ジミ・ヘンドリクス」のソロか、「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」の4枚目のアルバムか、「バンド・オブ・ジプシーズ」の初スタジオ作か、それとも新バンド「ジプシー・サン&レインボウズ」のデビュー作か...