Live 1967

The Monkees

Last train To Clacksville
You Just May Be The One
The Girl I Knew Somewhere
I Wanna Be Free
Sunny Girlfriend
Your Antie Grizelda
Forget That Girl
Sweet Young ThingMary, Mary
Cripple Creek
You Can't Judge A Book By Looking At The Cover
Gonna Build A Mountain
I Got A Woman
I'm A Believer
Randy Scouse Git
(I'm Not Your) Steppin' Stone

  俺より上の世代なら言うまでもなく、俺くらいの世代くらいまでならテレビで「ザ・モンキーズ」を見ていたという人は多いんじゃないだろうか。勿論俺もかなり好きで良くみてたわけで、そこでのモンキーズは「面白いドタバタ兄ちゃん達」であって、決してミュージシャンではなかった。ガキの頃の俺は「英語の歌」のコーナーになると退屈でチャンネルを変えたりしていた。

 現実の「バンド」モンキーズは、多くの場合「歌手」であってもやはり「ミュージシャン」ではない場合が多かったのは有名だ。スタジオではセッションミュージシャン達が大半を録音し、モンキーズの出番はほとんどヴォーカルだけだったという。せいぜいたまにマイクがギターを弾く程度のものだ。そのヴォーカルパートにしてもメンバーが必ずしもコーラスまでやるわけでもない。つまり彼らの場合メンバー中一人しか参加してない曲はザラにあったわけだ。「ビートルズに対抗できるアメリカ製アイドル」として生み出された彼らにはバンドとしての実態はなかった、と言うか与えられていなかった。

 そんなモンキーズもバンドとしての自我は芽生えてくる。特に元からプロのミュージシャンだったマイクは自作曲も提供していたし、実際"Mary Mary"の様なヒットも生んでいる。更に67年にはメンバー自身による演奏をフィーチャーしたアルバム"Headquaters"も生まれているのだ。もっとも実際の演奏力はマイクとピーターはともかく、ミッキーのドラムはかなり不安定だったようで、プロデューサーの「編集に苦労した」と言うコメントもある。でもこのアルバムは好内容だ。俺はかなり好きだし、さすが編集に苦労しただけあって不安定感もない。

 さて、このライヴ盤はその"Headquaters"とほぼ同時期のもので、ここでもメンバー自身の演奏を聴くことが出来る。オープニングから予想以上に快調で安定した演奏をしている。ミッキーはドラムを叩きながらのメインヴォーカルということになるが意外に危なげないし、マイクはカントリー畑の人だけあって複雑なアルペジオも弾きこなす。ピーターのベースも意外なほど太くて引き締まっている。デイヴィーはさすがに「元祖リードタンバリン」だけあって大きくは目立たないが、いくつかの曲ではオルガンも弾いている。

 ヒット曲"Last Train To Clacksville"からスタートするわけだが、ポップでスピード感のあるこの曲はライヴでもよく映える。本来持つスピード感を、下手であるがゆえにパンキッシュになる演奏が更に強調しているのだ。

 2曲目は名曲"you Just May Be The one"、マイクの自作自演のナンバーで、"Headquaters"の収録曲だ。さすがにアルバムでも自分たちで演奏していただけあってなったく問題のないプレイ。ピーターもスタジオ盤で自分で弾いたわけではないベースラインを弾きこなす。
 続く"The Girl I Knew Somewhere"も同じアルバムからの曲で、ミッキーとマイクのハーモニーが聴ける。オリジナルでのハープシコードは大胆にカットし、ギター中心のパワフルな曲に生まれ変わっている。

 "I Wanna Be Free"はデイヴィーが歌う。スタジオ盤よりいくぶん荒っぽいが、甘さばかり目立ったオリジナルよりこちらの方が好きだ。さすがに「アイドル」デイヴィーへの歓声も凄い。
 "Sunny Girlfriend"もマイクが歌う"Headquaters"からのナンバー。スピード感あふれる曲で、これもいかにもライヴ向けだろう。ミッキーがエンディング附近でずっこけそうになるのは御愛嬌。
 ピーターの"Your Auntie Grizelda"もスタジオより圧倒的によくなった曲の一つ。オリジナルの妙にもっさりした感じが消え、シャープなR&Rに生まれ変わった。中間部の「一種のスキャット(?)」もライヴっぽくてよい。
 "Forget That Girl"はデイヴィーが歌うブリティッシュビート風の曲。デイヴィーは実はイギリス人なのでやたらしっくり来る、というわけでもないんだろうが。
 "Sweet Young Thing"はミッキーが歌うポップな曲。いや、モンキーズは全部ポップなんだけど。

 "Mary, Mary"はミッキーのドラムから始まり、カウントで突然ストップ、しきり直して再スタート、というコミカルな展開はいわゆるモンキーズのキャラクターをよく表しているが、その後に始まる演奏はかなりタイトで、聞き応え充分だ。エンディングはスタジオとは違い倍テンポになって暴走する展開。ここでのコミカル且つパンキッシュな演奏とヴォーカルは聴きモノだ。終わったかと思ったらまたやってるし、しかも1分近くも...。こういう馬鹿な曲やるのも、作られたキャラじゃなくって結構地だったのかも。

 その後の各メンバーのソロコーナー(CDのボーナストラック)も楽しい。ここではセッションミュージシャンがバックを勤めているのだが、ピーター、マイク、デイヴィー、ミッキーの順で登場してソロヴォーカルを聴かせる。
 ピーターはバンジョーを弾きながらのヴォーカルで、"Cripple Creek"を演奏。カントリーはマイクの分野と思っていたが、ピーターも得意なのね。このバンジョーがマジで上手いんだ。
 マイクはボ・ディドリーのナンバー"You Can't Judge A Book By Looking At The Cover"をマラカスを振りながら歌う。ブルースハープもマイク。また、ピーターによるマイクの紹介のMCでは突然ビートルズの"Sgt Pepper's"が演奏されるのも67年と言うことを考えれば彼らの「ミュージシャンとしての視線」も見えてくる。
 続くデイヴィーのパートは"Gonna Build A Mountain"。オールディーズ風の曲で、ビートルズがデビュー前にやっていた感じの演奏だ。
 ミッキーはレイ・チャールズの"I Got A Woman"の暴走ヴァージョンを歌う。7分を超えるロングヴァージョンだが、ミッキーはパワフルに絶叫する。終盤は本当に叫びっぱなし、なかなか凄い。

 「全ての楽器をモンキーズが演奏」と言う触れ込みの本作だが、唯一気になるのが"I'm A Believer"。オルガンは誰が弾いているんだろう。ブックレットにはバックミュージシャンはソロコーナーのみと書いてあるが、そこのドラマーのところに「ドラムス、キーボード」と記述があるのだ。彼がこの曲(と"Randy Scous Git")でオルガンを弾いているという考えも捨てられないが、ここはおそらくデイヴィーによる演奏という考えで稿を進めたい。
 その"I'm A Believer"は勿論初期のヒット曲として有名で、後半導入部としても最適だ。「One , Two , Flash!!」声で始まるイントロもオリジナルよりアップテンポになった演奏も、下手ではあるが(スタジオミュージシャンによる)オリジナルをある面では超えている。
 続く"Randy Scous Git"はミッキーによる自作曲で"Headquaters"の収録曲だった。最新作の、自作曲をこの位置で演奏するということには彼らの自信が見える。ミッキーの「サイケデリック!」の叫びにも...

 そしてラストの"Steppin' Stone"のオリジナルとはだいぶ変わったヘヴィーな演奏も特筆したい。テンポが遅くなっただけでなく、例えばピーターがベースで"Purple Haze"のフレーズを演奏したり、エンディング附近もギターソロが入ったりして長くなっている。これらを含む後半のフリーキーな展開は確実に彼らが時代の空気を感じ取っていた立派な「ミュージシャン」だったことを物語っているんじゃないかと思うわけだ。