Learning To Crowl

The Pretenders

Middle Of The Road
Back At The Chain Gang
Time The Avenger
Watching The Clothes
Show Me
Thumbelina
My City Was Gone
Thin Line Between Love And Hate
I Hurt You
2000 Miles

 最近すっかり"Learning To Crawl"がお気に入りである。ここで「プリテンダーズは1枚しか持ってない」と書いたのはずいぶん前の話で、今はこの3rdまで(正確にはアナログの"Get Close"も)持っている。

 「2nd好き」の俺だが、このバンドに関しては一般に言われるように「1枚目と3枚目が傑作説」が当てはまると思う。正直いって、この人たちに関しては2ndは今一つ焦点が定まっていないような気がする。勿論、イエスなんかだとそういう面が好きなのは以前書いた通りだが、プリテンダーズの場合はその辺が気持ち良いはまり方にはなっていない気がする。決して嫌いな作品では無いんだけどね。
 主要メンバー二人(!)のドラッグによる死を乗り越えて作られたこのアルバムはある意味で「もう一つのデビュー作」とも言っていいだろう。「1stアルバムっぽい」ジャケにもソレが現れている。それからバンド名。実は2枚目までは単に「Pretenders」だが、このアルバムから「The」が付いているのだ。これはやはり転機を意味するのか。
 3枚目にして1枚目、悪いわけが無い。2倍である。

 その格好良いジャケを見ると、クールだったジェイムズ・ハニーマン=スコットに代わり今一つシャープさに欠けるルックスのロビー・マッキントッシュが収まっている(ベースはピート・ファーンドンに代わりマルコム・フォスター)が、レコーディングでは新メンバー決定まで手間取ったようで、他に二人のベーシストと一人のギタリストが参加している。そりゃあそうだ、(繰り返しになるが)メンバーが二人も、しかもドラッグで死んだのだ。制作体制が混乱しない方が異常だろう。

 しかし、アルバムの内容はそんな内情を一切感じさせない完成度とパワフルさを持っている。トップを飾る"Middle Of The Road"の格好良さは凄い。新メンバーが既に一体になったグルーヴを聴かせる最高のR&Rナンバーだ。クリッシーのクールなヴォーカルとブルーズハープも無茶苦茶格好良い。
 こんな良い曲で始まるアルバムが駄作だったためしは無く、続くどこか"Kid"を思い起こさせる"Back On The Chain Gang"の哀愁も感じさせるポップなメロディに更にKO。たたみかけるように硬質なロックナンバー"Time The Avenger"と"Watching The Clothes"の2連発を持って来られればもうたまらない。いかにもNWの時代な"My City Was Gone"もクールで格好良い。なんか切れ味の鈍いギャング・オブ・フォーみたいだが。
 音楽的にも前2作よりバラエティに富んでおり、カントリーというよりロカビリー調の"Thumbelina"なんかロビーのパンクレベルを遥かに超えた達者なプレイ(ポールのバンドでもご存知の通り、この人は本当に上手い)が聴けるし、"Thin Line Between Love And Hate"ではクリッシーがソウルバラード風の曲に挑んでいる。彼女のヴォーカルは決して黒くはならないが、間違いなく「ソウル」がある。そしてラストの"2000 Miles"が更に良い。ワルツ調で、メロディが美しいクリスマスソングだ。

 最後にもう一度ジャケに目を移す。どこにもファーンドンとハニーマン=スコットに対する追悼の言葉は無い。深読みすれば黒ずくめの4人を喪服とも取れる程度だ。しかし、このアルバムのそこかしこに「彼らのためにも乗り越えて行く」という決意が浮かび上がっている気がするのだ。いや、それが故にあえて言葉は使わなかったんじゃないか。その音楽と、相変わらず不敵なクリッシーの目。それで充分だ。