King Tubby Meets Rocker's Uptown

Augustus Pablo

Keep On Dubbing
Stop Them Jah
Young Generation Dub
Each One Dub
555 Dub Street
Brace's Tower Dub
Brace's Tower Dub No 2
King Tubby Meets Rockers Uptown
Corner Crew Dub
Skanking Dub
Frozen Dub
Satta Dub

 「ダブ」って何だ?85年、スタイル・カウンシルの12インチ"Groovin'"を買った俺はそう思った。その"You're The Dub Thing"を聴いてみたが「ん?カラオケか?いや、何か違う。リミックスって奴だな」まだビートルズとQUOくらいしかレコードを持っていない少年はそう思った。他の12インチに入っていた「クラブミックス」との違いはわからなかった。

 同じく、という亊になるが、92年頃のポール・ウェラーのEP(12インチは5インチCDのEPに取って代わられつつあった)にはよくプロデューサーのブレンダン・リンチによる「ダブミックス」が収められていた。このスペイシーなサウンドが俺にやたらにはまる。一時期はウェラーの曲以上にリンチのミックスが好き、というイメージさえ持っていたほどだ。同じころ、プライマル・スクリームの「スクリーマデリカ」にはプライマルとオーブ、そして元PILのジャー・ウォブルのコラボレーションによる"Higher Than The Sun"のダブも入っていた。これも原曲以上にツボだった。

 時代はさかのぼるが、高校時代、茅ケ崎のダイクマの楽器コーナーには安物の自動伴奏機能付きキーボードが置いてあった。よくガキどもはそれで遊んでいたが、俺も例外ではなかった。その中に1台、自動伴奏のヴォリュームをドラム、ベース、コード、別に調整できるものがあった。俺はそれがお気に入りで、各パートを抜き差しして遊んだものだった。頭の中には「ダブミックスごっこ」という言葉があったように思う。

 24歳くらいの頃だっただろうか。当時組んでいたテクノ風味ロックバンド「Sin Creation」を脱退した俺は、もうドラムはやめてテクノのミュージシャンになろうと考えていた。その頃流行が終わりかけていたブレイクビーツ・テクノやアンビエントに影響を受けていた俺は「じゃあレゲエとアンビエントだ」という発想で、レゲエのレコードを1枚も持っていないのにダブの曲を作った。当時買っていたシェイメンとかのシングルには必ず「何とかダブ」っていうミックスが入っていたせいもあるかもしれない(それらは全然ダブじゃなくて、落胆もしていたが)。とにかくこれはオリジナルが無い、最初からダブのナンバーだったが、自信作だった。ダイクマでの「ごっこ」を本格化できた、と思っていた。

 「ダブ」が(大ざっぱに言うと)レゲエのミックスの1形態だと知ったのは多分「ごっこ」時代から92年頃の間くらいだろうか。当時はまだリミックスとの境界は解っていなかったと思うが、「ダブはパートを抜き差しするもの」というイメージは「ごっこ」の頃からあったようだ。どこで知ったか、きっかけは覚えていない。何かの書籍かもしれないし、レコードかもしれない。ただはっきりしているのは、自作ダブを作った頃でさえ俺はまだレゲエという音楽にそれほど興味を持っていなかったということ。

 ダブに魅了され続けていた俺が最初にダブのレコードを買ったのは何と去年(2001年)だ。それがこのアルバム。レゲエ/ダブファンなら誰でも知っている一般常識レベルの名盤、まずこれから入るのは実に正しいことに思えたし、実際聴いてみると尚更実感する。ダブ界の大物二人、パブロとキング・タビーが合体したこの名盤、マジで一分の隙もない(音空間は隙だらけだが・後述)名盤だ。実際のところ、クレジットを見ちゃうとロビー・シェイクスピアやウェイラーズのリズム隊、バレット兄弟が演奏に参加してたりして大物だらけなんだけど。
 でもそんな亊は関係無く結局俺はこの「空間」が好きらしい。レゲエって奴は元々ワリと隙間の大きい音楽だと思うんだけど、そこから更に音を抜くことによってそこには大きな空間が生まれる。ディレイも空間を埋めるためというより広がりを強調するために鳴っているんだと思う。何にせよ、その大きな空間はそのまま大きく、ゆったりとしたグルーヴを生むわけだ。そして太いがもこもこしてアタック感の希薄なベースがその空間を地上につなぎ止める。あくまでゆったりと、だが。
 これがやたらに心地よい。アーシーなんだけど、スペイシー、地上の楽園っていう奴か?楽園というワリには哀愁も漂ったりして。そう言えばジャケもなんだかぼんやりして、夢っぽいぞ。

 結局今にして思えばブレンダン・リンチやプライマル・スクリームの「ダブ」は手法的には「リミックス」だったが、ダビーな空間は作り出せていた。「音を付け足したらダブじゃない」と言うのは手法としてはホントだけど、俺にとってのダブは多分そうじゃなくてこの「空間」なんだと言うワケ。