Hollywood Dream

Thunderclap Newman

Something In The Air
Hollywood #1
The Reason
Open The Door, Homer
Look Around
Accidents
Wild Country
When I Think
The Old Cornmill
I Don't Know
Hollywood Dream
Hollywood #2

 B級サイケの話はプリティーズの時にしたが、この人達もそう言う枠で語りやすいバンドだろう。彼らの場合「絵に描いたような一発屋」というおまけが付くのでB級どころかC級、くらいに言われかねない。
 しかし、彼らをB級に留まらせている(それでもBか)のがビッグヒット、デビュー曲にして全英No1、かの有名な"Something In The Air"の存在だ。

 この人達の場合、ポイントは謎の才人アンディ・ニューマンにあると言っていいだろう。兎に角彼のピアノは印象が強い。クラシカルと言うよりノスタルジックな響きのピアノはボンゾ・ドッグ・バンドのサウンドにも通じるものをもたらしていて、サイケデリック基本要素の一つ「捻れたノスタルジア」を演出する。"Something In The Air"は勿論、"Hollywood #1"、"Open The Door Homer"等でその明らかにロックとは別のセンスのソロ演奏が堪能できる。"When I Think"なんかはピアノだけじゃなくオーボエなんか吹いちゃって、独擅場である。
 特に"Accidents"ではピアノのみならず、様々な効果音でも貢献。この大曲の雰囲気を盛り上げるのに一役買っている。この曲はアルバム中最長の9分に及ぶ曲で、展開が色々と目まぐるしく変わって、例えばプリティーズの"Difecting Gray"の世界を拡大したようなサイケデリックトラックだ。

 ジミーは既にウイングス以降で聴かれる鋭いギターをモノにしていて、この人の才人ぶりにも驚かされるわけだ。それに勿論サイケデリック基本要素の一つ「歪んだサウンド」は彼の担当だ。とりあえず派手なプレイは"The Reason"でこれでもかって程聴けるし、ビートポップに最も近い"Look Around"のイントロでのリフの鋭さにも注目。

 そしてジョン・スピーディ・キーン。ドラマーでヴォーカリスト。その実マルチプレイヤー。そして優れたソングライター。彼等のポップな楽曲はほとんどキーンが書いているし、フーの"Almenia City In The Sky"が彼の作品なのは有名だろう。同曲ではロジャーが死ぬほどハイトーンで歌っていたのも笑えるが、このアルバムを聴くとなるほど、である。 この人、妙に声が高くて、凄いキーの曲をファルセットになる直前みたいな声で歌ってるのだ。
 全曲のドラムが彼かはわからないが、クレジットもないので信用すればドラマーとしても確かな腕だ。アルバム中最もハードな"The Reason"ではジミーのギターに張り合って(?)なかなか凄いプレイを繰り広げる。

 キーンの曲って、実は根っこはアコースティックな、フォーク的なものをもっとポップに引き寄せたような曲で、メロディをとれば凄く奇麗なものが多いのが解る。"Something In The Air"にしたって中間部をカットすれば普通のポップソングだ。でもトム・ペティのヴァージョン聴けば解るけど、それじゃあ面白くないのだな。
 キーンの書いてきた名曲をニューマンがいじくり回し、いろんなモノをぶち込めば若いジミーもギターで切り込む。それを嬉々として受け入れ、歌い上げるキーン、このバランスは絶妙だ。有名な話だがプロデュースはピート・タウンゼンド。ベースも弾いているが、彼はそれ程やることはなかったんじゃないだろうか。

 この変な奴等のやりたいようにやらせたら、何か変なのが出来ちゃった。面白いレコードが出来ちゃった。売れちゃった。楽しい楽しい、って、そんな感じのアルバムである。