そう、このアルバムではデビュー作とは違い、ボンゾズがかなり真っ当に「ロック」している。音楽的に、と言う意味でだ。「ロック=アナーキズム」と考えるとデビュー作の方がはるかにロックだったと思うが、ここにはより正統派の「ロック・ミュージック」が詰まっている。イネス色が強く、ビートルズ直系のメロディが随所に登場していて圧倒的に聴きやすいが、それでも相変わらずボンゾズならではの雰囲気(多くはスタンシャルに拠る)はキープされていて、決して音楽的後退は感じさせない。解りやすく言おう。要するに"Abbey Road"なんである、コレは。つまり最終作、大傑作、総決算。 まずトップにイネスの曲が続く。この3曲を「素っ頓狂なボンゾズ」を期待して聴くと酷く裏切られるかもしれない。ファンキーでヘヴィーな(ボンゾズなりに、だが)"You
Done My Brain In"、たった二つのコードに乗せられたメロディが不思議なくらい素晴らしい"Keynsham"、そしてゆったりとしたリズムと美しいメロディで聴いてるだけで幸せになりそうな"Quiet
Talks And Summer Walks"、この全く違うタイプの3曲はアルバムのイントロダクションとして一種の組曲的な存在になっているる(1曲も短いし曲間もほとんど無い)。 ここまでで俺はすっかりイネスの優美かつクールな世界に染まりきって「静かな会話、夏の日の午後」を堪能している。しかし、そうは行かないのがボンゾズだ。スタンシャルがヤカンと共に突然得意の馬鹿R&R、"Tent"をブチ込んでくる。歌詞もフリーキーで馬鹿、そいて間奏のサックス(スレイターか?)も明らかにワザと外し気味で飛び込んでくるという徹底ぶり。このコントラストがボンゾズ!次のパロディ的なロッカバラード"We Were Wrong"も含め、ここまで5曲は個人的にも大好きだし、この流れがボンゾ・ドッグ・バンドというものを良く表していると思う。 ボンゾズってイネスとスタンシャル、あとはせいぜいレッグスを中心に語られるが、実は本来の中心メンバーだったロドニー・スレイターの才能も無視できないんじゃないだろうか。"Quiet Talks And Summer Walks"、"Keynsham"でのフルートに"Tent"のサックス、って言う振り幅、しかも達者なプレイ。ボンゾズの音における貢献は大きかったんじゃないかな。その存在感、ブライアン・ジョーンズ的かも。 閑話休題。"The Bride Stripped Bare By 'Bachelors' "はそのスレイターやレッグスのヴォーカル、ってーか語りを含めた楽しい曲。何となくトラフィックを思い起こさせる雰囲気を感じるのは俺だけか。そう言えばウィンウッドとスタンシャルは友達だったな。次の"Look At Me I'm Wonderful"(コレも楽しい)や"Mr Slater's Parrot"、"Noises For The Leg"でも彼らの名前が歌詞やタイトルに登場する。作曲はイネスやスタンシャルで、解散目前とは言えメンバー間の楽しい雰囲気が伺える。再結成作で不参加のスレイターが「魂」でクレジットされていたのもうなずける話だ。 イネスのポップな才能は"What Do You Do?"や"I Want To Be With You"でも大活躍なんてモノじゃないくらいの天才ぶり(ホント、凄いよこの人)を聴かせ、スタンシャルは"Mr Slater's Parrot"でモンティ・パイソン的世界を聴かせたり(「主役」スレイター氏もクラリネット吹きまくってます)、"Sport"では逆に驚くほどジェントルなトラッド風の曲を作る等、才能の幅を見せつける(後半思いっきりロック化するのが更に驚きだが)。ボンゾズのラスト作に相応しい、集大成的な傑作に仕上がっているのだ。 |