Come Taste The Band

Comin' Home
Lady Luck
Gettin' Tighter
Dealer
I Need Love
Drifter
Love Child
a: This Time Around
b: Owed To 'G'
You Keep On Moving

 普通に聴いてディープ・パープルに聞こえるか、と言うとかなり微妙な線で、ブラックモア信者に酷評を受け、そうでもない大半のパープルファンにもちゃんと聞かれていないというのも実に良く解る。俺だって最近ようやく手に入れたくらいだから。でも、このアルバムは一つのハードロック作品と考えると実に素晴らしい。取りあえず、コレを無視してもパープルは語れるが、ブリティッシュ・ハードロックファンでコレを聴かないのも勿体ない話だと思う。俺は一発で気に入った。

 つまりはギター主体のHRサウンドに(HRの範囲内で)ファンキーなビート。実はコレってブリティッシュハードロックの基本形なのだ。そうでありながらハードロックの代表格と言われるパープルが持っていなかった要素なのだ。それを持ち込んだのは「新入りトリオ」ことデイヴィッド・カヴァーデイル、トミー・ボーリン、そして主犯格であるグレン・ヒューズだ。

 主犯二人、ヒューズ&ボーリンコンビが書いた超名曲"Gettin' Tighter"にとくに顕著だ。実はイアン・ペイスのタイトなリズムはこういうファンク風には結構マッチしていることが解る。メインのパートはノリノリのヘヴィーな16ビートだが、ミドルのインスト部分に入るとそれは明らかにJBやスライに影響を受けたと思しきファンクビートに変化する(ライヴではここから長いインプロビゼイションに移行)。このグルーヴこそこの所謂「第4期」の醍醐味だ。しかしこの状況なら「元アートウッズ」ジョン・ロードにはもっとファンキーにエレピなりオルガンなりを叩き散らかして欲しかったのだが、すっかり影が薄いのは残念というより他はない。

 ファンキーというのとは違うが"Love Child"の「狂気の欠けたブラックサバス」と言う感じのリフにボーナムっぽいフィルさえ聴かせるペイスという取り合わせも好きだ。サビや感想では展開も(パープルなりに)黒っぽくなり、特に一種スライっぽいシンセをうにょうにょと弾くロードがなかなか良い。"You Keep On Movin'"も跳ね気味のリズムにカヴァーデイルの(彼なりに)ソウルフルなヴォーカル(ほぼ全編でヒューズと分け合うスタイル)が乗って、ロードも一瞬昔を思い出した風のフレーズを聴かせる、かなり格好良い曲である。
 デイヴィッド・カヴァーデイルについて、彼について「ソウルフルな」とか「ポール・ロジャース風に歌える」みたいな表現を目にすることもあるが、スティーヴ・マリオットやスティーヴィー・ウィンウッドなどを聴いた耳には殆どソウルフルには聞こえない。ロジャースにも全く及ばないが、「パープルなりの」というレベルでは良くマッチした歌声だと思う。
 それに、当時まだ若いカヴァーデイルを彼らと比べるのは酷と言うもので(ロジャースも若かったが、あれは別格)、充分カヴァーデイルなりの「ソウル」は出ている。彼のスタイルはこの後ホワイトスネイクで完成をみる。

 閑話休題。第2期を彷彿とさせるストレートな8ビート(それでもこの時期は当時よりうねるのだが)の"Comin' Home"はまあいいんだけど、実際のところ、ツアーのセットリストからも漏れてるところから解るように第4期パープルにとってのこの曲は所詮従来のファンへのサービスに過ぎない曲なんじゃないだろうか。第2期マナーを一端再現して見せて、2曲目(Lady Luck!)以降は「まだまだこんなもんじゃないんだぜ?」と本領を見せつけるのだ。そう考えるともうこの曲はイントロがSpeed King、テンポがHighway Starという組み合わせで作られたようにしか見えなくなってくる。結果、アルバムトップなのに一番印象の弱い曲ということになってしまうのだ。
 その"Lady Luck"もよく跳ねた名曲だが、残念なのはこの曲と"I Need Love"が殆ど同じ曲といっても過言ではない事。どっちもいいと言えない事もないが、ただでさえタマが少ないこの時期、手抜き感は否めない。時代が時代ならもっと大袈裟なポップHR化して大ヒットシングルになりそうな感じはあるわけで、磨けば光ったとも思うのだが。
 どう聴いてもHRの文脈では語れないバラード"This Time Around"なんかは旧来のファンには凄く気持ち悪かっただろうなあ、とも思う。どこかフュージョンっぽいもんね。ヒューズの趣味が丸出しになっているが故のこのスタイル。まあHR入ってるからプログレっぽくも聞こえるんだけど(特に後半部"Owed To 'G'"のパート)、やっぱり異質ではある。
 個人的に嬉しいのはここで「第3のシンガー」もデビューしている事。"Dealer"の中間部ではトミー・ボーリンがリードヴォーカルをとる。「バンド好き」の俺にはそれだけでも嬉しいのだ。

 多くの人が馬鹿の一つ覚えのように言うことだが、俺も本当にそう思う。もっとこのメンバーでのディープ・パープルを聴いてみたかった。いや、ディープ・パープルじゃなくてもいい。もっとファンキーな鍵盤とドラムを加えた新バンドでもいいから、カヴァーデイル/ヒューズ/ボーリンの新展開が聴いてみたかったな。

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