Emotions


Phil May (Vo)
Dick Taylor (G/Vo)
Worry Allen (B)
John Povey (Key/Vo)
Skip Alan (D)

John Stax (B)

Death Of A Socialite
Children
The Sun
There Will Never Be Another Day
House Of Ten
Out In The Night
One Long Glance
Growing In My Mind
Photographer
Bright Lights Of The City
Tripping
My Time

A House In The Country
Progress
Photographer
There Will Never Be Another Day
My Time
The Sun
Progress

 メンバーから嫌われ、ファンの評価もけして高くない。そんなこの"Emotions"だが、いつものパターンで悪いケド実は俺、こいつって「アリ」だと思うのだ。プロデューサーの意向で勝手に加えられたストリングス/ブラスセクションが批判の的になっているが、まあ確かに明らかに「えぇ〜っ!?」って言うアレンジも、多々ある。いや、「多々」ってのが大問題なのだが、でも無視して通過するにはちょっと勿体ない、微妙な存在感のアルバムなのだ。だってさ、明らかに彼等のベストの部類に位置する曲だって入ってるんだから。

 なんだかキンクス中期を思い出す"There Will Never Be Another Day"がとりあえずガツン!と来る。そりゃあ勿論ボーナスで入ってるプリティーズ素のヴァージョンも圧倒的に格好良いのは言うまでも無いのだが、公式テイクの下世話なブラスもなんだかやけっぱち気味の鳴り方をしており、アレンジャーもプレイヤーもプリティーズを理解していなかったわけではない!と断言したいのだ。いや、単にバンドの勢い(特にメイのヴォーカル!)に当てられただけかもしれんが。何にしてもブラス込みで暴走してるこのロックンロールにとどめを刺す、ってワケである。
 順序は逆だが1曲目の"Death Of A Socialite"も良い。アコギとストリングスがいい感じで絡んでいる。他の曲に見られる、ミックスバランスで変に聞こえる感じもなく、ちゃんと音が混じりあっているのが良く聞こえる原因かもしれない。逆にいうと、この曲で「悪く無いじゃん」と思ってると以降の曲の変なミックスに「えッ!?」となるんだけど。とにかく、この曲は良い。大好きだ。
 ほとんど素のサウンドで聴かせるのが"One Long Glance"で、ディック・テイラーのギターが変幻自在のサウンドを聴かせる、ソフトでサイケなナンバーだ。いや、メロディはソフトなのだがサウンドは奇妙な歪み感が漂っていて、既にS.F.Sorrowへの布石を感じさせる。
 フォーキーな雰囲気にアコースティックなスライドが絡む"Tripping"も「素」度数が高い曲。ストーンズのベガーズ・バンケットあたりと近い感じで、勿論俺のツボ。とりあえずこれらの曲のためだけに買っても損はないはずだ。

 キツいのは"Growing In My Mind"や"House Of Ten"のアレンジで、さすがにこの辺のメロウ過ぎるヤツは簡単に言えば"The Long And Winding Road" でちょっと勘弁。メロディはいいバラードなんだけどな。
 ラストナンバーで、サイケデリックな"My Time"でも派手なアレンジが導入されていて、これが不思議な効果になっている。つまり、正直「センスのいいアレンジ」とは言えないのだが、このセンスの悪さが逆に安っぽいラウンジ調の気配を醸し出してしまって、本人達の意図するのと別の部分で絶妙なサウンドになってしまっている。

 新メンバー、ジョン・ポヴェイが活躍する"Photographer"は初期のイメージに近い暴走R&Rで安心するが、"There Will Never Be Another Day"同様にスピード感を生かしたブラスがここではあまり効果を上げていない感じがする。ポヴェイのピアノはいつでも最高なんだけどな。惜しい。これは圧倒的に「素」ヴァージョンに軍配。スピード感の演出はピアノに任せておいて正解なのだよ。

 ところで10曲目は"Bright Light, Big City"ではなく"Bright Lights Of The City"なので注意。エリック・バードン&アニマルズを彷彿とさせる曲だけど。