S.F. Sorrow


Phil May (Vo)
Dick Taylor (G/Vo)
Worry Allen (B)
John Povey (Key/Vo)
Twink (D)

Skip Alan (D)

S.F. Sorrow Is Born
Bracelet Of Fingers
She Says Good Morning
Private Sorrow
Balloon Burning
Death
Baron Saturday
The Journey
I See You
Well Of Destiny
Trust
Old Man Going
Loneliest Person

Defecting Grey
Mr. Evasion
Talkin' About The Good Times
Walking Through My Dreams

 サイケデリックミュージックってものが大好きなんだけど、個人的にその最高峰と信じているアルバムが3枚あって、そのうちの一つはコレでは無いと話は全く進まないのだが、他の2枚がPink Floyd / Piper At Gates Of Down、そしてRolling Stones / Their Stanic Majesties Requestであり「なぜ"Pepper"が入らないのだ!」等という声さえ聞こえる気がするが、「あんなものがサイケデリアの最高峰であってたまるものか」といいたい。...いや、勿論言い過ぎなんだが。
 極論になるが、ビートルズにはフロイド、ストーンズ、プリティーズ、そしてトゥモロウやジョンズ・チルドレンなどにある「いかがわしさ」が足りない。それは洗練されてしまっているが故であり、「ロックアルバム」としての完成度はビートルズに軍配が上がるのは言うまでもない。単に、俺がサイケデリアに求めるものが「いかがわしさ」そして「安っぽさ」である、と言うだけの話だ。ちなみにビートルズで最高のサイケデリック作品は"It's All To Much"であろう。ジョージはいかがわしくて安っぽいビートルなのだ。

 本題のプリティ・シングスだが、彼らには「乱暴系ブリティッシュ・ビート・バンド」の一つとしての側面もあり、勿論そっちも最高だが、ここではこの「サイケの金字塔」そして「元祖ロックオペラ」のこのアルバムを採り上げたい。
 元祖ロックオペラと言っても、ストーリーは陳腐なものだ。しかし他のロックオペラもその辺は元祖からしっかり受け継いでいるのでプリティーズの作劇能力をせめるつもりは全く無い。俺はこのサイケをつめられるだけつめた音にたまらない魅力を感じる。
 このアルバムにはサイケの全てがある。歪んだギター、分厚いホーンと弦、うねるドラムとベース、アコースティックサウンド、不協和音、ノスタルジックなメロディとアレンジ、エコー、東洋の楽器、当時の限界に近い電子音、テープ操作、下手糞なパーカッション、広がりのあるコーラス...etc。
 これらの要素が、整頓されず、雑然と詰め込まれること、これがサイケデリックの醍醐味である。

 例えばトップの"S.F. Sorrow Is Born"や"She Says Good Morning"なんかにも言えるんだけど、こいつらの場合サイケなサウンドの壁の中には「乱暴系ブリティッシュ・ビート・バンド」としての本性がバッチリ入っている。壁って言うより「柵」だろう。ごてごてした分厚い柵。とりあえずぐわ〜って囲ってるんだけど中身は丸見えなの。それで柵の中には凶暴な犬が放し飼いにしてある。しかもこの犬がまたラリってんの。
 例えも勢いワケ解んなくなったが、このアルバムの場合緻密と雑然のバランスが絶妙なんである。しかも、このバランス感覚、計算されてる気配が無い。

 さて、この猛犬の中でも一際凶暴で、ラリってる奴がいる。プリティーズの凶暴性ってヤツはなぜか凶暴なドラマーを寄せ付ける性質があるらしく、初期のドラマー、ヴィヴ・プリンスは去ったものの、ここではよりによってヴィヴにも劣らない「狂犬」を起用してしまった。そう、言わずと知れた3代奇人ドラマーの一人、トゥインクである。
 このアルバムでは彼のドラミングが光る瞬間が多々見受けられる。グルーヴも抜群だし、"Bracelets Of Fingers"の様な複雑なプレイもこなす。しかしやはり"Old Man Going"や"The Journiy"の終盤でのドラミングは白眉だ。キース・ムーン(勿論3代奇人の筆頭)よりグルーヴィーで、ミッチ・ミッチェルより頭がおかしい感じがするプレイ。彼の加入がこのアルバムにとっては「画竜点睛」であったと言えるかもしれない。
 そして意外に忘れられがちなメンバー、ジョン・ポヴェイとウォーリー・アレンによる多彩な楽器が「柵」を彩り、古株の猛犬二匹ことフィル・メイとディック・テイラーが自由自在に吠えまくるのだ。特にメイの変化に富んだヴォーカルは特筆したい。ただの乱暴者じゃないのだが、充分に凶暴性が除く歌唱なのだ。ちなみにダリの描いたポスターか何かの様なジャケットも実は彼の作品である。

 CDのボーナスにもなっているが、アルバムに先駆けたシングル"Defecting Grey"も素晴らしいので触れたい。"Pepper"に対する"Strawberry Fields"と言えば素晴らしさと重要性が解りやすいはず。目まぐるしく変わる曲調。ワルツからハードロックへ...ラーガロックだったり...ミュージックホール風だったり...ここにも先に述べた「サイケの全て」があり、その上凶暴である。