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世間的には傑作の誉れ高いアルバムだが、個人的には今一はまり切れなかったのがこの作品。やはり、俺の中ではプライマルは同じところに留まらずに進化/変化し続けるバンドというイメージが強い、というかそうあって欲しいという願望が強いので、このところの3枚の路線はちょっと停滞に見えてしまう部分もあるのだ。マニがベーシストとして固定されて3作、ドラマーもダリン・ムーニーになってからでも既に2作目。ボトムが決まることでバンドとしての安定感も増したが、方向性も安定してしまって、プライマルの新作を聴くときのワクワク感が減ってしまっているのだ。
ただし、一介のロックアルバムとして聴けば非常に強力であることもまた、事実。「プライマルの新作」という部分をヌキにすれば全く不満はない。サウンドの凶暴さは前2作を凌ぎ、アルバムタイトルをそのまま表現したような音。当然傑作と呼ぶことにも違和感はない。でもファンとしてはどうしてもプライマルに「一介のロックアルバム」以上を期待してしまうんだよね。ただ、これ以降ライヴ、ベストと連発してるところからもここでこの方向性は一旦完結したとも解釈できる。今(2004/4現在)は新しい方向性を探っている時期なのかもしれない。
オープニングの"Deep Hit Of Morning Sun"こそが「現代的サイケデリック」である。極端にディープなトレモロ(?)で分断されたサウンドが不気味に響き、アルバムを彩る(タイトル通りの)「邪悪」な感じを強調するのだ。つまりはイントロダクションである。
先行シングルだった"Miss Lucifer"は最初正直、失望感が強かった。アッパーではあるがあまりにも普通な(最近の)プライマル・サウンド。拍子抜けするくらい短いし。トランススタイルのR&Rと言うのもある意味で時代遅れだ。しかし、アルバムで聴くと序盤のよい流れを作っていると感じる。この位置でストレートにアッパーなR&Rナンバー(俺はこの曲は絶対にR&Rだと思う)を持ってくるのは見事だと思う。
シングルカットもされた"Autobahn 66"はタイトルはモロだし、ドラムやシンセの音から判断しても恐らくクラフトワークへのオマージュだろう。俺は残念ながら元ネタ(?)は未聴なのでこれ以上の判断は出来ない。プライマル的にはなんとなく"If
They Move Kill 'Em"の流れをひいているように聞こえる。曲調とか全然違うんだけど。このビートで不思議なくらいグルーヴィーなのはクラフトワークがディスコミュージックとして聴かれた事実との符合も感じる。
"Detroit"はかなりヘヴィーな曲だ。サウンド的には近年のプライマルスタンダードな歪みが基調になっていてあまり新しさは感じさせない。個人的には「休めない箸休め」という感じがする。ヴォーカルは「先輩」ジム・リード(ジーザス&メリー・チェイン)。ボビーの声みたいに聞こえるが"Psychocandy"聴いててもそう思うし。
オリジナルタイトル"Bomb The Pentagon"がやたら有名になってしまった"Rise"だが、原題こそ似付かわしい曲だってのも事実だろう。ボビー達はかなり凶暴にわめき散らし、前の曲を凌ぐ歪んだ凶悪ビートが響き渡る。
"The Load Is My Shotgun"はエレクトロサウンドに埋め込まれたブルーズナンバーだ。ロバート・プラント(!)がブルーズハープを凶悪にブロウするのがまたエキサイティング。ここまでの3曲は全く同じカラーのノイズで彩られていて、アルバムタイトルの"Evel"を体感させる感じのサウンドだ。ディストーションこそ全て、って感じ。そしてこのサウンドの立役者こそ、マイ・ブラディ・ヴァレンタイン(元って描かないぞ!)のケヴィン・シールズ。彼によるプロダクションは他数曲でも聴けるが、アルバムのカラーを決定づけている。
ここで登場する"City"はかなりストレートなサウンドのR&Rで、2nd"Primal
Scream"を彷彿とさせる曲になっている。前の3曲のせいで相当クリアなサウンドに聞こえるが、実はベースとか歪みまくってるぞ。こんなに凶暴なロックナンバーが心休まる瞬間になるほど歪んだアルバムなのだ。なおこの曲もシールズがプロデュース(ギターも)だが、違ったサウンドだ。
ケイト・モスをヴォーカルでフィーチャーした"Some Velvet Morning"はアルバムのハイライトの一つ。曲調は再びエレクトロサウンドに戻り、ゆったりしつつ鋭角的なビートにボビーとモスの浮遊感の強いヴォーカルが乗る。サウンドの骨格は大きく変わったが、どこか1stアルバムの世界を彷彿とさせる部分もあるような気もする。ある意味集大成的か。ベストアルバムからのシングルカットは象徴的だ。
"Skull X"もバンドサウンドのR&R。"City"よりはエレクトロなノイズが多いが、こういう曲はプライマルのアルバムには欠かせない存在だ。ライヴでも映える。
"Skanner Darkly"はちょっと印象の弱いインストナンバー。なんだか70年代終わりのUKニューウェーヴみたいにも聞こえる。
ラストをバラード曲で飾るのは定番スタイルだが、"Space Blues #2"はゴスペルライクなオルガンとエレクトロノイズが共存する不思議なチル・アウト感覚あふれる曲だ。余韻を残す、心地よい曲。
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