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プライマル・スクリームは凄いバンドだ。もし自分が好きなバンドのメンバーになれるとしたら、ビートルズと並んで入りたいバンドの一つだ。いや、ビートルズはリンゴあっての物だし、ウェラーもスティーヴいてこその、ゼップもフーもそういうバンドだ。そういう意味では彼らがトップかも知れない。なんせ彼らにはドラマーがいない(亊が多い)のだ。
プライマルが何故凄いか、彼らはアルバムごとにスタイルを大幅に変えている。デビュー作はバーズ風ギターポップ、2枚目はガレージパンク、この3枚目はアシッドハウス、4枚目では南部風ロック/ファンク、5枚目がダブ、最新作は珍しく5枚目の路線の延長にある印象だが、そこに更にフリージャズやトランスを混ぜてみた感じ、とまるで統一性が無い。こうやって文章にするととんでもなく節操のないバンドに見える。でも違うのだ。どんなスタイルでやっても、そのサウンドは常に「プライマル・スクリーム」という筋が通っている。常にロックンロールなのだ。こういうバンドを他に知っている。ビートルズだ。
サウンドの要はジョン・レノンとジョージ・クリントンを足して3で割って山盛りのヘロインを掛けたような男ボビー・ギレスピー(Vo)と、キース・リチャーズが血液交換するときに間違えてクラッシュとM・A・R・R・Sのレコードをぶちこんだような男アンドリュー・イネス(G/Prog.)の二人だ。特にイネスはボビーのイメージの具体化に貢献したんだろう。それにもう一人、ロン・ウッドを2で割ったような男ロバート・ヤング(G)がこの時点の中心メンバー。そこに更にサポートとしてキーボードのマーティン・ダフィ(元フェルト、次作以降正式メンバーに)そしてメインプロデューサーのアンドリュー・ウェザーオールなどが切り込んでくる。
オープニングナンバーは"Movin' On Up"。スティーヴン・スティルスの"Love
The One You're With"にインスパイアされたかのようなイメージを持つ。ストーンズ風にも聞えるが、ミックスを担当するのがあのジミー・ミラー。ミック・テイラー期のストーンズやトラフィックで有名な名プロデューサーだ。アルバム全体がハウス風サウンドで統一される中、オープニングはいきなりこのアーシーな曲だ。だが違和感はない。ある意味ゴスペル風でさえあるこの曲(スティルスのもそうだった)のファンキーなビート感と、2曲目以降のハウスサウンドは同一線上のものにあることが、理屈ではなく体でわかる。これがプライマルの凄さだ。だいたいダンスミュージックを頭で考えたら負けなのだ。
2曲目は確か13フロア・エレベーターズのカヴァー。原曲を知らないので間違ってたらすいませんが。いきなりエレクトロニックなビートが飛び出すが、前述の理由で唐突な印象はない。むしろこのハウスアレンジのロック曲が1曲目のロックサウンドと3曲目のもろハウスのつなぎとして機能しているのかもしれない。ミックスはイネスとヒプノトーン(トニー・マーティン)が担当。彼らもまたロックでハウスな二人だ。
"Don't Fight It , Feel It"はシングルとは違うミックスで、よりハウス的なサウンドに仕上がっている。ヴォーカルにデニス・ジョンソンをフィーチャー。黒人ならではのソウルフルなヴォーカルもいいが、全体を通じて流れる口笛(?)の音、マーティン・ダフィーのピアノなど、全体が聴きどころ、いや、踊りどころ。実際俺が最初に「やられた」のがこの曲だ。
プアイマルファン、いやこの時代のロックを愛するものにとっての永遠のアンセムとなったのが"Higher Than
The Sun"だ。バラードシンガーボビーの能力が遺憾なく発揮された曲で、彼以外の声では成立しないといっていいだろう。決して上手くない、と言うよりかなりはっきり下手なヴォーカルだが、プライマルのサウンドには絶対必要な「音」だ。この曲の話に戻るが、勿論メロディーやアレンジも素晴らしい。チル・アウト(レイヴで激しく踊った後のクールダウン用のアンビエント系の曲)系だが緩急がつけられており、結構踊れる。ミックスはこのてのサウンドが得意なジ・オーブ(アレックス・パターソン&スラッシュ)。
続く"Inner Flight"もアンビエント系で、アルバムの中休み的な役割を持つ。タイトル通りのトリップサウンドはエクスタシーの影響か。
アルバムからの先行シングルだった"Come Together"(勿論ビートルズとは同名異曲)は、シングルとは全く違うミックスで収録。"Don't
Fight It"同様のハウスよりなミックスになっている。個人的にはアルバムミックスを先に聴いたので、シングルのロックよりのヴァージョンを聴いたときは驚いた。"Movin'
On Up"あたりにも近いような70年代風サウンドが、アルバムではここまでダンサブルなハウスになる。目から鱗とはこのことで、「そうか、こういうことをやってもいいんだ」ってわけである。
そういう意味ではもっと凄いのがこの曲、"Loaded"だ。前作に収められていた"I'm
Losing More Than Ever Have"をアンディ・ウェザーオールがリミックスしたもので、これまた原曲はかなり(Let
It Breedのころの)ストーンズ風だったのだが、ウェザーオールは映画「イージーライダー」からの科白のサンプリングなどを加え、大幅にリミックス。原曲のビート感は生かしたうえで全く違うハウストラックに新生させた。つまりこの曲のシングルヒットがこのアルバムの方向性を決定づけたわけだ。アルバム全体に流れるソウル/ロック/ハウスの自然な融合。そのキーはここにある。
その流れがわかっていればここで突然登場する生バンドによるソウルバラード"Damaged"にも違和感はないはずだ。しかしさっきまでばりばりのハウスミックスをしていたアンドリュー・イネスが情感たっぷりのアコースティック・ギターを弾いているのも面白いといえば面白い。そしてボビーの歌はまるでヨッパライ。ここでもジミー・ミラーがミックスを行っている。適材適所って奴だ。
アルバムはチルアウト方面に向かう。"I'm Coming Down"はエレクトロニックサウンドは最小限に控え、サックスとコンガを加えた編成で"Inner
Flight"とは違った方法でトリッピーなサウンドを作り出している。どっちかというと眠りに落ちる寸前のような...
"Higher Than The Sun"が再登場する。こちらはウェザーオールのミックスによるダブヴァージョン(a
dub symphony in two partsと名付けられている)で、その名の通り二つのパートからなる。前半はオリジナルヴァージョンのアンビエント感を強調したようなミックス。後半では元PILのジャー・ウォブルの極太ベースが登場、トリップ感を更に増しながら流れていく。余談だがこのベースサウンド、俺にとっての理想の音の一つだ。
そして"Shine Like Stars"で静かにアルバムは幕を閉じる。波の音のようないわゆる「アンビエント」サウンドに足踏みオルガン風(ピアニカか?)のキーボード、オルゴールみたいな音、それにタブラと言う面白い組み合わせがバッキングのメインになっている。まるで夜空を見上げて歌っているような、ボビーの頼りなくも前向きな歌声がいい。
この後彼らはメンフィスに向かい、ここに更に本場のソウルサウンドを取り入れた"Dexy Narco EP"をリリースする。そこにはこのアルバムのタイトルソング"Screamadelica"が収録されている。よりファンキーなリズムを手に入れたプライマルはこの後も進化を続けていく。でも衝撃度、アルバムとしてのまとまりなど、総合点ではこのアルバムにかなわない。俺にとってはこれこそがプライマル・スクリームの最高傑作だ。
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