世間では結構評価が高かったりしたんだけど、どうなんでしょう。俺は今一つ馴染めなかったのだ。「新機軸」だったリズムやサウンドの感触も、好きではなかった。"Undercover"が嫌いな人ってこういう感じ方なのかな、とも思った。実際、ストーンズの作品では一番聴いてないアルバムだ。 そうは言っても最初っから結構気に入ってたのもあって、それが"Flip The Switch"なのだ。つまり最初の曲は好きだったのだ。本当にストーンズ最速のナンバーかどうかは知らないが、疾走感の強烈なブルースだ。ウッドベースを使ってるのが非常に効果的。ロカビリー的な気分も追加されるわけだ。タイプとしてはむしろ"Rip This Joint"より"Break The Spell"に近いんじゃないかな。 "Anybody Seen My Baby ?"に驚かされたストーンズファンは多い。相当に毛色の変わった曲に聞こえたんだろう。ループやサンプル、挙句にラップの導入って言うのは保守的なストーンズファンには「らしくない」と思えたのはまあ、当然とも言えるが、俺は「実はらしい」のではないかと思っている。ミックの新し物好きは有名だ。彼らはディスコビートを取り入れた"Miss You"を忘れてしまったのだろう。"Anybody Seen My Baby ?"は装飾抜きで考えればかなりストーンズらしい曲だ。2コーラス目の前に突如出てくる「ストーンズな」キースのギターは唐突だけれど。ブレイクビーツにも充分使えそうなイントロのベースとドラムにも注目したい。 "Low Down"は逆に(と言うのもなんだが)実にストーンズなルーズなロックンロールだ。しかし、ヴォーカルこそミックだが曲そのものは明らかにキースのもので、サウンドも実はキースのソロのものに近い。元ビーチボーイズのブロンディ・チャップリンがベース、キースのバンドからワディ・ワクテルがギターで参加している。 "Always Over Me"はかなりヘヴィーなバラード。ミックが弾くアコギとチャップリンの控えめなピアノが印象的。陰鬱なヴァースから世界が開けるようなサビへの展開がなんとなく年季の入った技、と言う感じ。元はベイビーフェイスがプロデュースしていたが、ボツにしたという。まあ、似合わない人選ではある。結局完成テイクではドン・ウォズが手がけている(ベースも)。 "Gunface"ではサポート陣はダニー・セイバー(B/G/K)とジム・ケルトナー(Perc)のみで仕上げられている。セイバーらしいメタリックな手触りの部分もあるが、基本的にはストーンズらしいシンプルなサウンドが貫かれている。エフェクト音はあくまで最小限かつ効果的に。好プロデュースである。 "You Don't Have To Mean It"はキースが歌うレゲエ(と言うか、ロックステディ)だ。イントロのチープなオルガンにディレイギター。トロピカルなサウンドはストーンズの曲でも屈指の陽気さを誇る。"Too Rude"等でも解るが、キースの声そのものがこの手のサウンドに似合ってると言うのもポイントだろう。勿論、ルーズな感覚も。 ここからがアルバムのハイライトだ。前述のライヴ盤でも聴けた"Out Of Control"はアルバム中屈指の傑作である。クールなベースから男声コーラス(キース、チャップリン、バーナード・ファウラー)、そしてミックの抑えたヴォーカルが入ってくる最初の1分から、サビで一気に爆発する流れは結構凄いものがある。勿論ブレイクでのミックのシャウトも。ちなみにミックはワウ・ギターを弾いたり、ハープのソロ(例によって絶品)を吹いたりと大活躍である。 "Saint Of Me"はゴスペル風のオルガンから始まる。実際にチャーリーが叩いたドラムをサンプリング、ループにして使ったというトラックは大成功で、実に強力なビートがでている。ちなみにオルガンは何とビリー・プレストン!かっこいいワケである。それにしてもループを使ってもまだしっかりラフなストーンズは流石だ。 "Might As Well Get Juiced"でもエレクトロなサウンドがフィーチャーされている。ストーンズ+ワクテル、ダグ・ウィンビッシュによるシンプルなトラックが基本だが、それをダスト・ブラザースがプロデュース、と言うよりリミックスしてこの形になったようだ。しかしどこかサイケデリックでもあり、ブルーズ感覚も強いサウンドになったのが不思議というか、流石っぽい。ツェッペリンの"Hats Off To (Roy) Herper"を現代風にやった感じというか・・・。 "Always Suffering"と"Always Over Me"がごっちゃになるんですが。同じ単語で始まるバラード系の曲ってだけだけど。こっちの方がカントリー調爽やか系。ミックの歌が妙に気持ち良さげだ。 "Too Tight"は普通にロックな曲だが、80年代のストーンズ以上に80年代っぽいイメージを感じるのは俺だけだろうか。ちょっと穴埋めっぽいのも仕方ないのだろうか、タイトルほどタイトでもない。ミックはここで退場。 "Thief In The Night"はキースが歌うクールなスローナンバー。バラードってワケではない。これもどこかソロアルバムでの彼、例えばあの名曲"Make No Mistake"なんかを思い起こさせる曲だ。そう言う意味でチャーリーとスティーヴ・ジョーダンを聴き比べるのも面白いのだが、やはりチャーリーは適度にルーズで、それが最高に良いのがよくわかる。アルバム中で確実にトップ5には入る曲だろう。 "How Can I Stop"がラストナンバー。ここのところストーンズのアルバムのラストはキースのヴォーカルというのが完全に定着している。しかしこの2曲の置き方は"UK
Jive"でのデイヴ・デイヴィスのヴォーカル曲みたいじゃないか。ちょっといただけない曲順。 ところで日本盤ボーナスの"Angie"のライヴ、「ボーナストラック蛇足大賞」決定である。いや、殿堂入りだ。演奏云々ではなく、この発想がクソである。せめてラスト曲終わって10秒間置いて入れて欲しかった。基本的にボーナストラック好きの俺が言うんだから説得力あるだろ? |
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