Tatto You

Start Me Up
Hang Fire
Slave
Little T & A
Black Limousine
Neighbours
Worried About You
Tops
Heaven
No Youse Crying
Waiting On A Friend

 ストーンズの諸作中最も過大評価されているアルバムがこの"Tatto You"ではないだろうか。この作品が実はストーンズの(当時の)「新作」ではなかった、というのは今では有名だ。過去のアルバム(主に"Emotional Resque")のアウトテイクをクリス・キムジーがかき集め、ボブ・クリアマウンテンが絶妙なミックスをして完成させたのがこのアルバムである。ストーンズはオーバーダブと極く一部の新曲の録音しかしていないのだ。

 しかし、この作品は堂々たる傑作となり、チャートアクション的にも大成功を収めた。結論から言うと「過大評価」に耐えうる傑作なのである。

 オープニングは今でもステージには欠かせない代表曲"Start Me Up"である。これだけでもう決まったようなもんである。こんな曲をアウトテイクとして捨てておくストーンズは凄いのか馬鹿なのか良く解らんが、結果として世に出て本当に良かった。この時期のミックとキースの創作意欲の枯渇に感謝すべきだろう。最高にストーンズしている曲だが、単なるストレートなR&Rではないのがミソ。リズムはねじれ、うねりまくる。まるでリズム楽器の一つになったようなミックのヴォーカルが最強。
 "Hang Fire"も捨てるには惜しい曲だ。あっと言う間に終わるパンキッシュでポップなR&R。チャーリーとミックが好き勝手に失踪するのをキースとロニー、ビルが飄々とついていくのがクールである。
 "Slave"は70年代的なファンキーな曲で、実際に"Black And Blue"のアウトテイク。ピート・タウンゼンドが参加している。この頭打ち16ビートが強烈だ。おそらくビリー・プレストンと思われるキーボードもクールだ。勿論ミックのファルセットも・・・
 「しばれるR&R」こと"Little T&A"はキースが歌うR&Rで、キースのパブリックイメージは実は"Happy"よりこんな曲の雰囲気じゃないだろうか。ラフで単純なR&Rだが、これを最高に気持ち良く聴かせるからこそ、ローリング・ストーンズなのである。
 ロニーが作曲に加わった"Black Limousine"は得意のジミー・リードスタイルのブルーズで、ミックのブルーズハープとロニーのギターを大フィーチャーしたナンバーだ。この手の曲はもう怖いモノ無しという感じ、堂々としきっている。泥臭さは薄く、むしろシティ・ブルーズ的なのが特徴。こー言う曲のピアノは当然スチュ。
 "Neighbours"もストーンズ流にパンキッシュなアップテンポのR&R。スカスカなサウンドが80年代的でもあるが、何とそこにソニー・ロリンズ(!)がサックスを吹くというミスマッチ感が凄い。キムジーのプロデュースとクリアマウンテンのミキシング(チャーリーのHH全カット!)が見事にはまった「人口R&R」であった。

 ロックナンバーが揃ったA面に対しB面は「バラード・サイド」とでも言うべきか。"Worried About You"ではミックがクールなファルセットとエモーショナルな地声を巧みに使い分けるソウルバラードの傑作ナンバー。サビのラスト「Baby!」がたまらない。チャーリーを中心にクールに徹するバッキングもこれ以外あり得ないと言った感じ。
 "Tops"もソウル的なサウンドのバラードで、ピアノが地味ながら印象的だ。ビリー・プレストンっぽいプレイだけど。つまり"Goats Head Soup" のアウトテイクで、当然ミック・テイラーがギターを弾いている。これで揉めた(ノークレジットなのだ)ことは有名。
 "Heaven"はラテンタッチのドリーミーな曲で、どこかサイケデリック調でもある。何とシンセとギターをビルが担当。どこか"In Another Land"に通じる印象なのはそのせいか。実はビルが作者という説もあるくらいだが、あながちウソとは言い切れなさそう。
 "No Use Crying"もロニーが作曲に関わっている。ダルなバラードで、おそらくロニーのクリーントーンのギターが印象的だ。アレンジはともかく、60年代に録音しても似合っていたかもしれない感じがする。
 ラストの"Waiting On A Friend"はビデオクリップがやたらに印象的だが、歌詞がまた男っぽい=ストーンズっぽくてクール。バラードとしてはちょっとアップテンポなのもヴォーカルの感じと相まって男臭さを強調。対してニッキー・ホプキンスの流れるようなピアノがやたらに美しいのも絶妙なコントラスト。そして再び登場のソニー・ロリンズが最高のサックスで彩りを添えるが、これまたクールに親指立てるようなプレイ(意味不明)で、もうたまらないのだ。

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