Face Dances
Side 1
Side 2
You Better You Bet
Don't Let Go The Coat
Cache Cache
The Quiet One
Did You Steal My Money
How Can You Do It Alone
Daily Records
You
Another Tricky Day

Remix & Remaster CD

You Better You Bet
Don't Let Go The Coat
Cache Cache
The Quiet One
Did You Steal My Money
How Can You Do It Alone
Daily Records
You
Another Tricky Day

I Like Nightmares
It's In You
Somebody Saved Me
How Can You Do It Alone (Live)
The Quiet One (Live)

 

 キースの後任って言うのはとにかく分が悪いのは言うまでも無く、辛い立場のケニー・ジョーンズには賛否両論あるがどっちかって言うと「否」に偏りつつも、結構みんな「かわいそうだけど」って前提で語っている印象がある。
 このアルバムの評価も同様で、キースの不在、ピートのやる気の欠如こそあれ、「フーのアルバムとしては」物足りないと言う意見が多く見られる。そう、水準以上のポップ/ロックアルバムなんである、こいつは。状況がこのアルバムに損をさせて入る。勿体ない。
 更にここで言っておかなければならないのは「このアルバムをキースが叩いてさえいれば...」という意見に関してだ。勿論、このアルバムのサウンドに適したドラマーはケニー・ジョーンズその人だった。"Who Are You"でも触れたが、ピートの曲自体がキースの演奏に適さないようになってきているのだ。
 実際、このアルバムは「キースの死によってあるべき形で製作されなかった」ワケではなく、初めからこの形で製作されており、その完成形として充分な物なのだ。"Face Dances"の評価を落とす原因は「ファンのキース幻想」=「フー幻想」ということになる。

 オープニングの"You Better You Bet"を聴けばいかにフーが(ピートが)気合いを入れてこの作品を作っていたかが解る。実際、この曲は「幻想派」のフーファンにも受け入れられたほぼ唯一のケニー時代の曲である。もちろん、「現実派」にとっても心地よい曲であることは変わりない。シーケンスフレーズを使ったイントロ、中間でのテンポチェンジ、歌詞に出てくる「Who's Next?」のフレーズ。かなりノスタルジックな作りだが、過去への精算と言うとらえ方もできる。つまりそれだけ前向きな印象もあるというコトで、実際、キースを再現するでもなく曲を生かす方向性を選んだケニーのプレイも素晴しいものだ。新生フーの幕開けである。

 "Don't Let Go The Coat"はもうちょっと地味だ。この時期のピートのソロに近い雰囲気の曲で、あまりロジャーの声質に合っていない印象がある。曲そのものはポップで悪くないのだが、いわゆるパブリックイメージとしてのフーとはかけ離れた印象も。シングルにもなったが、賢明な選択とは思えない。

 "Cache Cache"もやはりピート色の強い曲。パンクへのシンパシーも感じる曲と歌詞だが、勿論暴走感はなく、小奇麗にまとまっている感じがちょっと物足りない。構成も単調になりがちだが、ピートらしくないシンセの使い方がどうにも気に入らない。ヴァースのバッキングなんかコーラスで事足りるではないか。曲そのものは・・・以下同文。シングルにはなっていないが。

 ジョンの"The Quiet One"は彼自身が歌うハードロック。キース的ではないが叩きまくるドラミングも「フーっぽい」感じで良い。ギターとベースの音数は少ないがドラムで埋めていく感じ。ジョンのキーギリギリっぽいヴォーカルも気合いが入っていて、アルバム中でも最高の曲の一つ。
 ボーナストラックでライヴテイクが聴けるが、この曲はライヴで映える。82年のフェアウェルツアーでも良く演奏された。

 "Did You Steal My Money"はこれまたフーっぽくない曲調に、ピートがタイトルフレーズを呟き続けるバッキングヴォーカル、そしてロジャーが歌いづらそうなヴォーカルをとる曲。ラビットのシーケンスっぽいピアノこそ聞こえるものの、どう考えても弱い曲。

 "How Can You Do It Alone"はファンキーというかレゲエ的というか、なんにせよキース在籍時には実現できなかったと思える曲だ。裏拍を強調したリズムの隙間を縫うのはベース。これまでのフーでは見られないリズム構造である。サウンドは結構シンプルで、メロディや構成も悪く無い。中盤の唐突なスコティッシュな音は何かと思うが。
 CDのボーナストラックとしてこの曲のライヴテイクが入っているが、コレはアルバムリリース前の演奏で、タイトルフレーズこそ出てくるがジャムセッション的な演奏。歌詞もメロディ(ピートが歌う)もビートも全て別物である。これがここに発展する過程を想像するのも面白い。興味深い演奏だ。

 後半は比較的クォリティ的にも満足が行くのだが、この"Daily Records"は若干弱い。明らかにピート向けのメロディラインであり、特にヴァースはロジャーには似合っていない。だがサビ前の流れはなかなかパワフルで一際光っている。
 そう言えばこのアルバムにはピートのヴォーカルが無いが、きっとヴォーカリスト・ピートはソロ作で満足しきっていたからなんだろう。

 ジョンが作りロジャーが歌う"You"もパワー溢れるHRだが、"The Quiet One"にはかなわない。80年代の典型的HRと言う感じのサウンドで、前作くらいからのジョンの作風の特徴にもなっているものだ。この手の曲の例に漏れずメロディはマイナー調で、日本人受けしそうでもある。そんなワケで、俺は好きなのだ。アレンジにひねりが無さ過ぎる気もするが。

 ラストナンバーの"Another Tricky Day"は"You Better You Bet"と双璧をなす名曲で、最初と最後をガッチリしめてるのでこのアルバムがありきたりの駄作になるのを防いでくれている。2004年のツアーで復活したのもメンバーが気に入っている証拠では無いだろうか。
 こういう16ビートもフーには新境地と言えるかもしれない。ファンキー一歩手前くらいでとどまる微妙なビートにラビットのピアノがクールなグルーヴを作りだす。元フェイシズ&元フリーが得意路線で引っ張るのだ、悪いはずが無い。勿論「フー」の3人もまけじと頑張りを見せる。特にヴァースでのロジャーとピートのハーモニーは興奮モノである。

Single and Rare 1981
LIVE TRACKS 1981
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