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ライヴ・エイド等での散発的な再結成を経て、89年、フーは遂に本格的な再結成を果たす。切っ掛けがどちらなのかは知らないが、まずピートのソロアルバム、"The
Iron Man"で2曲がThe Who名義で発表される。この時の、実にアルバム"It's Hard"以来の新曲が"Dig"と"Fireだ。まずこの2曲について軽く触れておきたい。
"Dig"は静かなコーラスから始まり、サイモン・フィリップスのシャープなドラミングを切っ掛けにポップに展開していく、"By
Numbers"以降の典型的なフーサウンドな曲だ。派手なところはないが、メロディもいいし、ロジャーにもよく似合っている。出来ればシングルカット(勿論フー名義で)して欲しかった(売れなかっただろうが)。
もう一曲の"Fire"はアーサー・ブラウン(Truck時代のレーベルメイトだ)の有名なヒット曲。原曲の怪しげなところはなくなり、フィリップスのパワフルだが決して逸脱しないドラミングを軸に、ある種ファンキーな展開を聴かせていく。正直、あまり出来は良いとは思えない。
ツアーについての詳細は別ページで触れるが、このアルバムは言うまでもなく、そのりユニオンツアーの様子をおおまかにさらった作品となっている。このツアーの目玉は70年以来の再演となった"Tommy"全曲再現(全ての会場で行われたわけではないが)で、このアルバムのディスク1は全てその模様に充てられている。ぶっちゃけて言って、そんなに良いものではない。いちいち触れているが、とにかくサイモン・フィリップスのプレイとホーン・アレンジが最悪なのだ。ホーン抜きで(または一部のみの参加で)、もっとましなドラマーだったら名ライヴになりえた可能性も・・・好きな部分は結構好きなんだから。
ゴージャス極まりない15人編成のバンドで"Tommy"を演奏するとなると、当然面白いくらいにオーケストラルなサウンドになる。特に"Overture"の様な曲では映画版にも劣らないほどのきらびやかな音になっている。しかし、全曲に言えるが69〜70年当時のスリリングな音は望むべくもない。それでもピート一人になって"Captain
Walker"のパートを演奏するときには当時と変わらぬシャープさを聞かせてくれるのだが。ちなみにこのアルバムでは"It's
A Boy"(コーラス隊の一人がリードを取る)まで1トラック、"Overture"と言うタイトルで収録されている。
"1921"はスティーヴ・ボルトンのボリューム奏法によるギターが印象に残る意外はほぼオリジナル通り。「歌詞の食い違い」は残念ながら再現されていないが。
"Amazing Journy"と"Sparks"はフィリップスが異様に手数の多く、テクニカルなドラミングで頑張るが、キースの狂気の一億歩手前にさえ近づけない常識人ぶりを露呈する情けない結果に終わっている。所詮この人は上手いだけでアクの強いロックバンドには向かないのだな。うねりも全然無いし。3点である。"Sparks"ヘの繋ぎではラビット、ボルトン、ジョンがそれぞれソロを聴かせる。勿論聴き所はジョンのソロ。この人はいつでもいつもの調子である。
"Eyesight To The Blind"は映画ヴァージョンのファンキーブルーズ風アレンジでロジャーが歌う。こういうソリッドな演奏にはフィリップスも合っているようだ。同じく"Christmas"もソツのないアレンジが施されている。やはり音数が多い分映画版をイメージさせるが。
"Cousin Kevin"はジョンが悪意を込めて歌う。これはオリジナルに近い印象だ。作者自ら歌うのは久々だが、ゲストを迎えて行われたLA公演ではビリー・アイドルがチンピラっぷりを全開にして好演した。
"Acid Queen"もオリジナル通りピートが歌うが、アレンジは映画版準拠、ファンキーな感じになっており、女性コーラスがソウル風味を加えるがどこかちぐはぐな感じもする。フィリップスのドラミングは相変わらずのっぺりとした機械のようなプレイで、ピートがシャウトすればするほど温度差が際立つ。どうにも気持ち良くないのだ。なお、LAではパティ・ラベルが歌った。
"Pinball Wizard"のイントロがピートのアコギで奏でられるのは気持ちが良い。ロジャーが入ってくる1コーラス目は最高だ。だが、ホーンとドラムが入ってくると俺の嫌いなピートのソロライヴのアレンジになってしまい、幻滅。特にブリッジのホーンが嫌いだ。エンディングの新アレンジは何?LAでは(勿論!?)エルトン・ジョンが登場したが、ロジャーがこの曲を歌わないフーのライヴって言うのも不完全燃焼な感じだ。
"Do You Think It's Alright"はピアノとアコギ、コーラスだけでシンプルに変身。続く"Fiddle
About"も久々にジョンが歌う。何故か作者自身が歌ったほうが違和感があるのは映画でのキースの怪演のインパクトが強すぎたせいか。LAでのフィル・コリンズ(この曲はドラマーが歌う伝統がある)もキースのレベルにはほど遠かった。
"There's A Doctor"もシンプルに流して"Go To The Mirror"へ続く。この曲はほぼアレンジ無し。フィリップスもさほど違和感はない。ラビットとボルトンがきめ細かい仕事をしているのが好感。でもやっぱりホーンアレンジは嫌い・・・。"Smash
The Mirror"も同様に無理の無いアレンジ(映画寄りではあるが)だ。サポート税の資質か原曲よりファンキーさが際立っている。
"Tommy Can You Hear Me?"は殆ど原曲通り。女性の声が聞こえるな、くらいの違いだ。ジョンのパーカッシブなベースが相変わらず良い。
"I'm Free"は映画ヴァージョン。例によってハードロックなリフに対してフィリップスが冷ややかで興ざめする。オリジナルに比べたらつまらないアレンジだが、結構嫌いじゃないヴァージョンなのに、この人のドラミングとホーン(またか)がぶち壊している。次への繋ぎの"Miracle
Cure"の新アレンジの演奏部分も邪魔臭い。
"Sally Simpson"は原曲が結構メリハリに欠けていたこともあり、結構悪くないまとまり方をしている。特にラビットのピアノは良い。でもやっぱりホーンはいらないなあ。あと後半部分のヴォーカル(「16
stiches・・・」以降の部分)でシャウトしないのは減点。直前の「Oooooh!!」が生きてこないのだ。
"Sensation"も違和感なくまとまっている。ホーンの使い方はこれが一番いいかもしれない。何故かピートが歌っている。なお、この辺の曲順はオリジナルと入れ替わっている。
"Tommy's Holiday Camp"もほぼ元通り。ピートがコミカルに歌っているのでロジャーの「Welcome!」の声が半分笑っている。そのまま"We're
Not Gonna Take It"に突入。ここではフィリップスは悪くないが相変わらずホーンがイマイチ。それでも大団円(非ハッピーエンドだが)らしく、気合いを感じる演奏になっているのは流石、か。"See
Me, Feel Me"では再びボルトンのボリューム奏法が登場、そのままロジャーの熱唱とともにエンディングへ。昔のようなシャウトは望めないし、ピートもエレキギターじゃないので演奏では盛り上がらないが、その分を気合いで補っているふうなのが人数は多くても「フー」だなあ、と思わせる。決して最高の演奏じゃないが、このくらいは「感じさせる」演奏だと思う。
2枚目はその他ヒット集になっているのだが、恐らく数ヶ所のライヴを寄せ集めたものだろう。通常の曲順は別ページに譲るが、ここではピートのソロ曲を多く盛り込んでいる。ヴァージンとの契約の関係があったのかもしれない(前述の"Iron
Man"も同社からの発売)。
そんなワケで最初は"Eminence Front"。フーの曲だがピートソロ色の強いナンバーだ。しかし面白いことに、ここでのヴァージョンはジョンが異様に張り切って派手なベースラインを聴かせており、不思議なくらい「フー」している。そして、そんな「フーの」曲にはホーンも女性コーラスも似合わないことを露呈してしまったヴァージョンでもある。つくづく男の世界。
"Face The Face"はピートの"White City"からのナンバーで、バンドがほぼディープ・エンドと変わらないだけにソロツアーのテイクと殆ど同じと言っていい演奏だ。ちなみにオリジナルヴァージョンでのベースはピノ・パラディーノ。ここでは彼のフレーズをジョンが弾いているわけだが、ジョンの死後、逆にパラディーノがジョンのフレーズを弾くことを考えると因縁じみたものさえ感じる。
次は前述の"Dig"。録音メンバーは殆ど同じで、直後のツアーでもありスタジオ版と殆ど同じ演奏。と、言うワケでこの曲こそロジャーが歌うもののここまで3曲全てピートのソロ、または彼が歌う曲だ。
"I Can See For Miles"はリリース当時ヒット曲であったにも関わらずオーバーダブが多くてステージで再現できなかった曲。今回はスティーヴ・ボルトンの参加により演奏が実現したと言われているが、このヴァージョンは「再現」と呼ぶにはほど遠い、ショボいカヴァーヴァージョン、と言う感じだ。ドラマーが全くキース・ムーンを理解していないのが致命傷である。アルバム全体を通して最悪のプレイ。
再びピートのソロ曲。"Empty Glass"からのナンバー、"A Little is Enough"である。原曲より躍動感のある演奏になっていてこっちの方が好きだ。
続いては"Quadrophenia"から2曲。"5:15"は元々ホーンが活躍する曲なのだが、余計なフレーズまで入れてしまって大失敗。"Love
Reign O'er Me"はジョディ・リンスコットのティンパニーがあるせいか珍しくアルバムヴァージョンのイントロ付きで演奏。暑苦しい曲(褒め言葉)を盛り上げている。全体のバッキングも悪くない。それにしてもロジャーはいつも、声が出ようと出なかろうと、必ずこの曲をギリギリまで熱唱する。最近この姿勢に妙に感動するのだ。
"Trick Of The Light"は79年他のツアーでも演奏されていたが、アルバムでも、その時のツアーでもロジャーが歌っていた。今回は何故か作者のジョンが自ら歌う。これが実は、と言うかやはりと言うか、ロジャーよりピッタリ合っているのだ。演奏もコミで、個人的にはこのアルバムのベストトラックと思っている(異論は物凄く多いだろうが)。ホーンもドラムも不思議なくらい出しゃばらないし。
"Rough Boys"もピートのソロ(これも"Empty Glass"から)。当然、ほぼオリジナル通り。結局(この後に挙げる数曲も含み)、"Quadrophenia"以降またはピートのソロ、つまりキース的キチガイ性を曲自体が求めていない場合にのみこのドラマーは上手く演奏できる様だ。
"Join Together"は何故かアルバムのタイトルトラックになっている。最初のヴァースでの異常な音圧の無さが気持ち悪く、何故これをシングルカットまでしてしまったのか・・・と言う感じだ。全体にはソツなくまとまっていて、そんなに悪いわけではないのだが。
"You Better You Bet"は流石にケニー時代の曲で、このバンドにも似合っているようだ。ロジャーが一部不思議なタメ方をする以外、殆ど変わりのない演奏。
"Behind Blue Eyes"は前半部がアコギによるバッキングなので雰囲気が出ているのがポイント。そこに絡むジョンの歪んだベースがアクセントになっている。後半部への繋ぎが問題で、気を利かせたつもりのドラミングが大失敗に繋がっているのがどうしようもない。カラーがガラッと変わるスリルを理解していないのだ、この3流ドラマーめ。
ラストは当然"Won't Get Fooled Again"なのだが、この曲もディープ・エンドのヴァージョンを下敷きにしており、変なホーンアレンジが例によって最低である。ギターに音圧が足りないのもツラいし、勿論3流ドラマーは相変わらずの安っぽいプレイでお茶を濁す。ロジャーの声も(全体にそうだが)出ていないので、ジョンだけが頑張っている感じだ。名演の多いこの曲のこのテイクをわざわざ聴く理由はない、と言ってしまいたい。少なくとも、俺は嫌いだ。
と、これだけ罵詈雑言を並べながら、不思議とごくたまに聴きたくなってしまう不思議なアルバムである。聴いて「やっぱり実はいいよな」とは決して思わないのだけれど。実は「プレイヤーとしての俺」はフィリップスのプレイもたま〜にちょっとだけ真似したくなってしまうのだ。
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