![]() Tommy the Movie
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| 1976年、ケン・ラッセル監督によって映画化された"Tommy"のサントラ盤。音楽は基本的にピートの監督によって、フーを含む多くのミュージシャンによって演奏されており、このアルバムをフーの作品と呼ぶのは正確ではない。サウンド的には"Quadrophenia"の発展型と呼ぶべき物になっていて、シンセの多用による(必要異常に)ゴージャスなサウンドが特徴。「必要以上」とは書いたが、ラッセルによる悪趣味ギリギリ(もしくは一線を越えている)映像には実にマッチしている。 ミュージシャン勢は上記した通りだが、基本的にピート人脈(ロン・ウッド、ケニー・ジョーンズ、ニッキー・ホプキンス、エリック・クラプトン他)と、ジョンのソロ用のバックミュージシャン(アラン・ロス、フィル・チェン他)を中心に集められた。本来はフーによる演奏をメインにする予定だったが、キースの不調のためケニーをはじめとする多くのミュージシャンが呼ばれることになったという。 オープニングの"Prologue 1945"はオリジナルの"Overture"にあたる曲で、曲の構成や使われるモチーフが変更、曲も長くなっている。ホーン以外をピート、ホーンはジョンによる演奏。なお、現行のCDにはストレートに"Overture"をリメイクした"Overture From Tommy"が収録されているが、コレはロジャーのソロシングル"I'm Free"にカップリングされた物。 "Captain Walker / It's A Boy"は元は"Overture"の一部だった"Captain Walker"を"It's A Boy"と合体させた物だが、元々"Overture"と"It's A Boy"はセットのような物なので流れ的にもそう大きく変わる物ではない。ただし、バンドアレンジ(実際にはピートの一人多重録音)になった"Captain Walker"はオリジナルとは大きく印象が違う。余談になるが、ここで看護婦のヴォーカルを吹き替えているヴィッキ・ブラウンは同じく歌手のジョー・ブラウンの妻。二人とも一部ではジョージ・ハリスンとの交流でも知られる。 "Bernie's Holiday Camp"は一応新曲だがほとんどの部分は"Tommy's Holiday Camp"の改作。ただしこの曲はピートが単独で作曲クレジットを持っており、"Tommy's..."のゴーストライターがピート、という疑惑を裏付ける。ここではフーの演奏にアン・マーグレットとオリバー・リード、そして子供トミーの吹き替え歌手(アリスン・ドウリング)がヴォーカル。演奏自体はフーらしさも感じないし、あくまでストーリーの肉付け用、という感じだ。 "1951/What About The Boy"はオリジナルに置ける"1921"で、時代設定の変更によってタイトルも変わっている("Waht About The Boy"は同曲のUS盤でのタイトル)。映像に合わせるために間奏が大きく引き延ばされ、ミック・ラルフスのギターがフィーチャーされる。オリジナルでのトミーの心の叫び("I Saw It"等と歌う部分)はカットされている。ホプキンス、ステイントンの両巨頭がキーボード類を担当。ベースはピート。 "Amazing Journy"には映画用に少し説明的な歌詞が追加され、サウンドはシンセの多用によって映像にマッチしたカラフルな物になっている。SF的なサウンドに「戦闘機でピンボール」の映像が印象的だ。その分バンドは職人的な演奏に終始。 タイトルに反してクリスマスっぽさが無かった"Christmas"はこのヴァージョンでは「ニッキー・ホプキンスによって」(ピート談)クリスマスソングに変貌した。だが、曲の不穏さは全く消えていない。むしろメインのヴァースが奇麗になった分、全体の不気味さが際立つ結果に。 豪華ゲスト陣はここから大挙登場する。まずは"Eyesight To The Brind"、アルバム中唯一のカヴァー曲をエリック・クラプトンがプレイ。原曲がソニー・ボーイ・ウィリアムスン(ピートはモーズ・アリスンを参考にしたと言われるが)という事もあり、順当な配役だろう。しかしエリックのヴォーカルは今一冴えない。見た目もちょっと教会の牧師(?)と言うにはカリスマ性がなさ過ぎる・・・。ただし、ギターは十分冴えている。バックはジョン、ケニー&ピート。つまり「第2期フー」である。なお、映画では最後のヴァースをアーサー・ブラウンが歌っている。これがまた強烈&怪演なのだが、なぜかサントラには入っていない。リマスターで入るかと思ったんだけど、叶わず。 続いて登場は"Acid Queen"、勿論ティナ・ターナーである。これは、凄い。オリジナルを軽く凌駕した強烈なパフォーマンスだ。もうティナってだけで凄いって部分は確実にあるんだけど。いや、こればっかりは是非映像コミで見て欲しいと思う。ラストの表情は本当に凄い。なお、バックを固めるのは続いて登場の第2期フー+ロン・ウッド&ニッキー・ホプキンス。名手ばかりである。ロニーの役割はギターによるファンキー味付けだろうか。ピートとは明らかにリズム感が違うのがわかる。 "Do You Think It's Alright?"はトミーを巡るさまざまな状況をノラ&フランクが「大丈夫かい?」と危惧するパートで、3回登場する事になる。ここでは(DVDの解説でも触れられていたが)アン・マーグレットの「口紅を塗りながら」「あくびをしながら」の歌唱に注目。プロだ。 最初に登場の心配のタネは"Cousin Kevin"である。原曲よりもメリハリを効かせたアレンジでケヴィンの凶悪さを強調。ポール・ニコラスのエキセントリックな演技も拍車をかける。この撮影中、ロジャーはジョンに「こんな酷い歌詞にする事なかったじゃないか」と愚痴ったそうな。ロジャーもよく耐えたよな。 続いてはもっとエキセントリックな人が登場だ。"Fiddle About"でアーニーおじさん役を地のまんまで怪演するのは勿論お待たせキース・ムーンその人である。作者のジョンから完全にこの役を取り上げた見事な演技。演技なのか。まるっきり普通の変態にしか見えないもんな。嬉々として歌い、暴れ、そして勿論元気なんだからドラムも叩く。そういうワケで演奏はフーである。 "Sparks"はここに移動。トミーの鏡、そしてピンボールとの出会いを描いた重要なシーンとして使われている。これをプレイできるのはフー以外に存在しないが、シンセの分厚い壁でオリジナルやライヴヴァージョンでのスリルはスポイル気味だ。 "Extra, Extra, Extra"は新曲扱いだが"Miracle Cure"と同じ曲である。ピンボール・チャンピオン・トミーの誕生を報じる歌詞に書き換えられており、曲の長さは倍以上になっている。それでも1分無いが。 そしてエルトン・ジョンが登場。この"Pinball Wizard"のヴァージョンはエルトン用にオリジナルのギターのイントロがピアノになったりしていて微妙に芸が細かい。歌詞も加えられているし、"I Can't Explain"が登場するアレンジも注目すべきポイントだ。ちなみにエルトンは映画での「あの」ブーツを貰う事を条件に出演を許諾したそうだ。流石。なお、映像ではフーの演奏(ドラム破壊も!)が見れるが、実際にはエルトンのバンドが演奏している。また、プロデュースもこの曲のみピートではなくガズ・ダッジョンが担当。おそらく映画チームとは別にエルトンが録音したものだと思われる。それにしてはアルバム全体と上手くマッチした。 "Champagne"はフーの演奏、アン・マーグレットとロジャーのヴォーカルによる新曲。"See Me Feel Me"が挿入されている。サウンドは全体に"Quadrophenia"風。曲調もヘヴィーだ。映画でノラが半狂乱になるシーンでの演技と、テレビから飛び出す大量の液体(泡、ベイクドビーンズ、チョコレート!)の映像は(気持ち悪いが)圧巻。衣装がセクシーだし、メッシー方面のフェティストにはたまらんだろうなあ。マーグレットはこのシーンで大怪我をしたそうだ。 "There's A Doctor"はマーグレットとリードが歌う。あっという間に終わるインタールードで、オリジナルともそう違わないが、ロニー、ケニーにクリス・ステイントンと言うメンバーが贅沢に使われている。 "Go To The Mirror"はオーケストラ盤同様語り調のヴォーカルになっている。歌うのはジャック・ニコルスン。この人もいい感じにいやらしいおじさん演技だ。なぜかオリジナルの"LIstening To You"のパートがカットされている。ストーリーはスムーズだが、音楽としてはちょっと物足りない。 "Tommy Can You Hear Me?"はオリジナルの軽快な感じは完全に消え去り、すごく重苦しいサウンドになった。コーラスも無しでマーグレットのソロヴォーカル。ラン・ロスと(珍しく)クリス・ステイントンがアコギを弾くが、これも原曲とは全くテイストが違うプレイだ(ピートはベースか?)。もっとも雰囲気の変わった曲だと思う。 "Smash The Mirror"はオリジナル通りファンキーなハードロックサウンド。ここではより「70年代風」の演奏で、バンドも第2期フー+アラン・ロス。マーグレットのソウルフルなヴォーカルがたまらん。 ロジャーのソロシングルとしてカットもされた"I'm Free"は、オリジナルよりストレートなアレンジに変更された。頭の位置がわからないリズム構造は廃し、代わりにZep風(?)のハードなギターリフが導入された。ロジャーのヴォーカルもよりハードロック色を増した。この時期以降のライヴでは殆どこのヴァージョンでプレイされているが、多分バンド的にも楽なんだろう。ちなみにここでの演奏も第2期フー+ホプキンスである。 "Mother And Son"は書き下ろされた新曲の一つで、ここではピートがすべての楽器をプレイ。曲的にも明らかに"Quadrophenia"以降のフーのスタイルで書かれている。 "Sensation"も位置が変更された曲の一つ。オリジナル通りロジャーが歌い、演奏もそれほど違う印象は無い(フーのプレイではないが)。なお、映画ではピートが歌う変奏曲的なパートがイントロ前に追加されており、当時のパンフレットでは「トミーが飛ぶ時」というタイトルが付けられている。 "Miracle Cure"は相変わらず一瞬。なお、"Extra, Extra, Extra"共々ピートの弟、サイモン・タウンゼンドがヴォーカルをとっている。 "Sally Simpson"はナレーターのピートが語る挿話的なパート。この構成はいつも通りだ。トミーの説教のパートはロジャーが自らヴォーカルをとる(歌詞は追加されている)。オリジナルよりセカンドラインっぽい雰囲気が付加されていて、心地よいグルーヴだ。演奏にはクラプトンとホプキンスも参加。 "Welcome"はピートのソロ演奏+ロジャー&リードのヴォーカル。これもほぼオリジナル通り。元がバンドっぽい音ではなかったし、違和感が少ないのはオーケストラ盤同様。 "T.V. Studio"はインタールード的な新曲。状況説明以上でも以下でも無く、曲もそれなり。映画にはこういう曲も必要、と言う事か。 キース再登場。"Tommy's Holiday Camp"は今までは(作者がキースという事になっているにもかかわらず)ピートが歌っていたが、ここで「作者」に返された事になる。流石にハマっているが。これ以降ライヴでもキースが嬉々として歌う事になる。このヴァージョンはトミーグッズ販売シーンが追加されている。 "We're Not Gonna Take It"はオリジナルに無い信者たちの抗議(?)シーンから不穏に始まる。原曲の曲調とは裏腹のハッピーな雰囲気はうすれ、ピュアなトミーと群衆の怒りの齟齬がサウンドで表現されたアレンジになっている。タイトル部分を歌うパートでは明らかに怒りが表現されている。ヴァース以外にロジャーが登場しない事によって曲の意味がわかりやすくなっているのだ。 そして"See Me, Feel Me / Listening To You"でいつものように大々的なフィナーレを迎える。ライヴで熟成されたヴォーカルアレンジをスタジオに持ち込んだロジャーの歌唱は堂々としており、完璧すぎて逆に行き過ぎの感さえ覚える。勿論フィナーレはフーの演奏で締めるのは言うまでも無く、また、この曲をフー以上に完璧なプレイが出来るミュージシャンはいないだろう。ただしピートのシンセ、ステイントンのオルガン、ホプキンスのピアノ、ジョンのホーンでサウンドをゴージャスに飾るのは忘れていない。このヴァージョンはフーの新ヴァージョンというよりやはり、映画のサントラヴァージョンなのだ。 |
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