Tommy Performed by London Symphony Ochestra
Side 1 Side 3
Overture
It's A Boy
1921
Amazing Journy
Sparks
Eyesight To The Blind (The Hawker)
Christmas
There's A Doctor
Go To The Mirror !
Tommy Can You Hear Me?
Smash The Mirror
I'm Free
Miracle Cure
Side 2 Side 4
Cousin Kevin
The Acid Queen
Underture
Do You Think It's Alright?
Fiddle About
Pinball Wizard
Sansation
Sally Simpson
Welcome
Tommy's Holiday Camp
We're Not Gonna Take It
See Me, Feel Me
Cast

Pete Townshend / Narrator, Guitars & Synthesizers
Sandy Denny / Nurse
Steve Winwood / Father
Maggie Bell / Mother
Roger Daltrey / Tommy
Richie Havens / Hawker
John Entwistle / Kevin
Merry Clayton / Acid Queen
Ringo Starr / Uncle Ernie
Rod Stewart / Local Lad
Richard Harris / Doctor

London Symphony Ochestra

Chamber Choir

 

 現在トミーを収録したアルバムはオリジナル盤、ライヴ3種、サントラ、ミュージカル版、そしてこのオーケストラ版が存在する。そして、これがその各種バリエーションの中でも最初に世に出た「アナザー・トミー」だ。
 オペラと銘打ってあるものをオーケストラで演奏、この発送は非常にわかりやすい。それを更にオールスターキャストで演じるというのがこの企画のウリで、このスタイルは映画版を含め、後のバリエーションでも踏襲されていく。

 "Overture"はいかにもオーケストラにはまりそうだが、アレをロックバンドでやっていたのがミソであったわけで、ある意味ちょっとつまらないものになっている。まあ、それは他の曲にも共通する話で、これを言ってしまうと始まらないというのも事実だが。オリジナルは完全なインストだったが、ここではコーラスが"See Me, Feel Me"を歌っている。
 ピートの歌う"Captain Walker"のパートへは唐突に移行する。後半のオーケストラ対ギターの掛け合いは聞き応えがある。
 "It's A Boy"はサンディ・デニーが歌う。彼女の透明感のある歌声とバックのハープ(琴だよ、ハーモニカじゃなく)が非常にマッチしている。

 "1921"は父親役のスティーヴ・ウィンウッドと母親役のマギー・ベル、そしてトミーを演じるロジャーが歌う。"you didn't see it..."のパートは実際に3人で歌うことで脅迫的な印象や混乱した感じを出すことに成功している。しかし、強烈そうな母ちゃんだな、この声は(映画版も凄いが)。

 "Amazing Journy"は後の映画版のプロトタイプ的な印象のスペイシーな演奏。オーケストラに丸ごとフェイザーをかけているのが凄い。ここではピートが歌う。続く"Sparks"共々、キースのドラムがキモだったのでそれが欠けることでダイナミックさが失われているのが大きな欠点だ。オーケストラにしてはそこそこフリーキーな演奏になってはいるのだが。

 行商人"The Hawker"はリッチー・ヘイヴンスが演じる。 元々サニー・ボーイ・ウィリアムスンのブルーズナンバーだから妥当な線か。アレンジはオリジナルヴァージョンをオーケストラに置き換えた感じだが、「黒いフォークシンガー」ヘイヴンスにはよく似合ったアレンジに聞こえる。ヴォーカルは映画ののクラプトンより味がある。

 "Christmas"は妙に分厚くなってしまって、重厚というより重苦しい感じだ。狙いなんだろうが聴いていてしんどい。ヴォーカルはウィンウッド。こういう曲ではウィンウッドも生かしきれないと思うのだが。

 オリジナル通りジョンが演じる"Cousin Kevin"は、ケヴィンの豹変が上手く表現されないアレンジに不満が残る。ブリッジのホーンなど不穏な感じが出てはいるのだが、もっと強烈なほうがいいと思う。やはりキースがえらい、と言う話になるのか。

 強烈な人が演じることに決まっている"Acid Queen"は、ここではストーンズの"Gimmie Shelter"でも知られるメリー・クレイトンが歌う。ジプシーだと思ったら黒人らしい。ティナ・ターナーやパティ・ラベルにも負けない存在感である。オーケストラは負けている。エンディングにはピートの演奏するシンセが入り、"Underture"に繋がる。"Sparks"のヴァリエーションなのでまた「キースが偉い」ということになるのは置いておくが、オリジナルとは違い、4分弱のコンパクトな演奏になっている。"Sparks"とどこが違うというのか。

 マギー・ベルがコーラスとともに歌う"Do You Think Its Alright"に続いて登場するのは"Fiddle About"アーニーおじさんを演ずるのはリンゴ・スター。バッキングには違和感は少ないが、リンゴはちょっと言い人っぽすぎる気がするが。
 そして、メドレーになって更に大物が。ロッド・スチュワートはピンボールチャンピオンを演じる。"Pinball Wizard"のこのヴァージョンはシングルにもなったし、彼のソロにも収録されているので有名だろう。しかし、ロッドにはもっとロックなバッキングで歌って欲しかった。このテイクが彼にも、曲にもあっているとはちょっと、思えない。

 "There's A Doctor"はウィンウッドが歌う。インタールード系なので違和感は無し。この曲に導かれるのは"Go To The Mirror"で、リチャード・ハリスが語り調で歌う。"See Me, Feel Me"のパートは勿論ロジャー、最後のワンコーラスには今回今一つ覇気の無いウィンウッドも登場。彼の黒いノドが聴きたい人には不満だらけのアルバムである。演奏面では、こういう緩急付けるアレンジにはオーケストラも割とマッチするように思える。

 ウィンウッドもこのくらいやれよ、と言いたくなるほどパワフルなマギー・ベルの歌が"Tommy Can You Hear Me""Smash The Mirror"で堪能できる。かなりソウルフルで、ここでのベルの演技が後の映画版での母親のエキセントリックなキャラクターを決定づけたのかもしれないと思わせる。

 "I'm Free"でのロジャーの歌唱スタイルは映画ヴァージョンのプロトタイプ的なフレージングになっているところがミソ。ライヴはこういう歌い方はしていない。ただし、オーケストラのバッキングとマッチしているかというとかなり微妙な感じもある。ベルやクレイトン、ロッドに触発されたのかなあ。なお、このテイクはロジャーのソロ名義でシングルにもなった。"Miracle Cure"はコーラス隊によるアカペラ。
 "Sensation"もロジャーが歌う。ここでは"We're Not Gonna Take It"のフレーズがバッキングに織り込まれ、本来トミーと別に書かれたこの曲を溶け込ませることに成功している。

 "Sally Simpson"は挿話的なパートのため、ナレーターのピートが歌うことになったようだ。アレンジは大きく違い、本来の偽セカンドライン風なリズムは消え、バロック風の演奏、まるで吟遊詩人かなんかが宮廷で物語を語っているかのような印象だ。「ホーリー・グレイル」のニール・イネスみたいな感じで...。単調になりがちなこの曲を上手くアレンジしたと言える。
 続く"Welcome"はむしろこのヴァージョンが自然とさえ思わせる曲だ。絵に描いたようなオペラ調?ヴォーカルは当然ロジャー。

 再びリンゴが登場する"Tommy's Holiday Camp"はマーチ風のアレンジになっている。なかなか曲に合った楽しい演奏ではないだろうか。終盤に来ていい演奏が増えてきた。

 そしてラストの"We're Not Gonna Take It"だが、この曲はさすがにバンドじゃないと気分的に物足りない気もするんだけど、このコンセプトということで考えるといいアレンジの部類かもしれない。特に楽しげなトミーと不穏な群衆の対比はうまくいっている。
 しかし、"See Me Feel Me"はいいのだが、後半に入るとやはりキースの不在が圧倒的に物足りなくなってくる。ロジャーが叫べば叫ぶほどキースが欲しくなる。結局最後まで「キースが偉い」ってオチかよ。

back