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第6回 子どもを生かす言葉、芽を摘む言葉

この記事は時事通信社出版局発行「教員養成セミナー」に連載しているコラムです。

 アメリカの新古典主義の画家、ベンジャミン・ウェスト(1738-1820)は、自分が画家になったきっかけをよく人に話していたそうだ。子どもの頃、妹と2人で留守番をしていた彼は、家にインクの瓶があるのを見つけて妹の肖像画を描き始めた。筆からはインクが垂れ、じゅうたんを染みだらけにしてしまった。帰宅した母はしかし、それを叱ることなく、絵を手にとって、「まあ、サリー(妹の名)ね」と彼にキスしたそうだ。その母の口づけが自分を画家にしたと、彼は後々まで語っていたという。

 人の潜在的な能力を引き出すのは、叱責や脅しではなく、励ましや、誉める言葉ではないだろうか。1つの言葉で、子どもは才能を開花させることもあるし、芽を摘み取られることもある。

 聖書には、ある父親が死ぬ間際に子どもを祝福する場面があって、その言葉には後で取り消すことができないほどの威力があった。口から出した言葉はその通りになると考えられていたからだ。口にする言葉の重要性を聖書は一貫して教えている。

 親や教師の言葉は良くも悪くも子供の人生に影響を与える。子供のあらを探して、「部屋が汚い」、「どうしてこんな成績しかとれないんだ」というようなネガティヴな言葉ばかり聞かされていては、子どもの心には不安や劣等感しか生まれないだろうし、時には怒りを持たせることにもなるだろう。しかし、彼らの良い面を積極的に見て、励ましたり、褒める誉める言葉は、きっと彼らの健全なセルフイメージと、生きてゆく自信を生み出す。子どもたちは自分が受け入れられ、愛されていることを常に感じる必要があるのだ。

 いじめや自殺のニュースが私たちの心を暗くしているが、「君は素晴らしい」「君は大切だ」「君はできる」などの積極的な言葉を、親や教師からかけられることを待っている子供たちがたくさんいるのだと思う。

 

  2007年2月号掲載


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